カレントテラピー 33-11 サンプル

カレントテラピー 33-11 サンプル page 15/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 33-11 サンプル の電子ブックに掲載されている15ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 33-11 サンプル

38 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111088Ⅰ はじめに放射線治療の歴史は,1895年にレントゲン博士がX線を発見した翌年の1896年に始まる.この120年の間に放射線治療は目覚ましい進歩を遂げており,現在では,手術療法,化学療法と並ぶ,がん治療3本柱のひとつに位置づけられている.局所療法である放射線治療と手術療法とを比較した場合の放射線治療の最たる特徴は,臓器の機能と形態の温存が可能であるということである.また,手術に比し,体への負担が軽く,手術不能な合併症を有する患者や高齢者でも比較的安全に施行可能である.さらに,根治,緩和,予防といったさまざまな目的で用いられることも,放射線治療の重要な特徴のひとつである.近年の放射線治療の進歩は機械工学の進歩に寄与する部分がきわめて大きい.X線CTやMRIをはじめとする画像診断技術の発達は,放射線治療を行ううえでの標的体積(以下ターゲット)の形状をより正確に把握することを可能にし,コンピュータ技術の進歩により,正確な3次元線量計算が可能となった.また,機械工学の進歩は治療装置の発達に大きく貢献し,原体照射や三次元放射線治療(three -dimensionalconformal radiation therapy:3D-CRT)といった現在ではルーチンに行われている治療技術が編み出された1).これら技術の更なる進歩が,高精度放射線治療の実現を可能とした.本稿では,これら高精度放射線治療について概説する.Ⅱ 定位放射線照射(stereotactic irradiation)1 定位放射線照射の定義と分類定位放射線照射とは,限局した小腫瘍に対して,*1 広島大学大学院医歯薬保健学研究院放射線腫瘍学助教*2 広島大学大学院医歯薬保健学研究院放射線腫瘍学教授がん診断と治療の最近の動向─ 個別化医療の発展高精度放射線治療西淵いくの*1・永田 靖*2近年,放射線治療は目覚ましい発展を遂げており,がん治療3本柱のひとつに位置づけられている.高精度放射線治療の登場により,腫瘍への線量集中性を向上させるとともに,正常組織への線量を低減することが可能となった.その結果,実臨床においては原発性肺癌や前立腺癌など,従来は手術が中心であった疾患において,放射線治療が標準治療として位置づけられるようになった.現状では,これら高精度放射線治療を施行できる施設は限られているものの,その普及は急速に進んでいる.がん患者数の増加に加え,QOLを保ちながら癌を治癒させるという意識の高まりや,高齢者の増加といった現代社会のなかで,高精度放射線治療の果たす役割が今後ますます大きくなっていくことは必至である.本稿では,高精度放射線治療として,定位放射線照射,強度変調放射線治療,画像誘導放射線治療について概説する.