カレントテラピー 33-11 サンプル

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34 Current Therapy 2015 Vol.33 No.111084Ⅱ 乳癌の局所的広がりの診断原発性乳癌切除標本の病理診断に求められる内容は大別して,目で見える癌の広がりの指標と乳癌細胞の生物学的特性の指標とに分けられる.前者にはpT,pN,切除断端の検索がある.1 腫瘍浸潤径浸潤性乳癌は通常原発巣において浸潤癌成分と乳管内進展成分とから構成される.これら両者を合わせた腫瘍径ではなく,浸潤径が再発リスク因子となることから,可能な限り正確に,最大割面もしくは切り出し図から再構成した3次元での最大浸潤径の計測を行う.複数の浸潤癌巣がある場合は加算せず,最大の癌巣の長径を測定する.すでに生検が行われた小型の浸潤癌については,生検標本も参照し,生検検体,腫瘍本体のいずれか浸潤径が大きいほうを採用する.また事前にincisionbiopsyなどで浸潤癌巣が断片化している場合は,個々の断片の浸潤径を加算せず,可能なら画像を参照しながら病理医の判断によって計測を行う2).2 腋窩リンパ節転移の評価リンパ節転移については転移リンパ節個数のほか,センチネルリンパ節(sentinel lymph node:SN)の場合はリンパ節転移巣の最大径も重要となる.AJCC/UICCのpTNM分類第7版ではリンパ節転移巣の大きさを転移巣の長径に基づき,マクロ転移,微小転移,遊離腫瘍細胞(isolated tumor cells:ITCs)に分類し,以下のように定義している2). 遊離腫瘍細胞(pN0(i +)):長径≦ 0.2mm かつ悪性細胞≦ 200 個 微小転移(pN1mi):長径> 0.2mm,かつ/ または> 200 細胞,しかし長径2.0mm を超えない) 通常の転移(pN1a):1 個以上の転移巣が長径2.0mm を超える2005年のAmerican Society of Clinical Oncology(ASCO)ガイドラインではマクロ転移,微小転移は転移とみなすが,ITCsは転移とみなさないと記載されていた.一方で,SNに微小転移やITCsしか見られない患者でも,それぞれ20%前後,9~12.3%の頻度で非SNに転移が見られる.また,SNにおける微小転移,ITCsはそれ自体が予後不良因子であるという結果も示されていた4).しかしながら,ACOSOGZ 0011試験の結果からは,乳房温存療法と術後補助薬物療法が行われた臨床的T1- 2でSN転移陽性(2個まで)の患者に対して腋窩リンパ節郭清の追加は受益がなかった,という結論が示されている4).さらに,AMAROS試験ではT1- 2,臨床的N0でSN転移陽性であった浸潤性乳癌の患者において腋窩照射群は腋窩郭清群と比べて成績に差がなかった,という結果が得られた5).これらの試験結果から,SNと乳房温存療法の対象となるような早期乳癌患者においては,術後補助薬物療法や術後照射を行うことで局所リンパ節や全身における潜伏転移巣のコントロールと予後改善が可能であると理解されている.現在ではSNの詳細な検索で見つかる微小転移,ITCsの臨床的意義は非常に小さいと結論づけられている.3 切除断端の評価乳房切除,特に乳房温存療法における乳房部分切除においては,癌巣の取り残しがないことが前提となる.そのことを保証するためには切除標本全体における浸潤癌巣,乳管内進展巣の進展様式が把握され,切除断端に癌巣が及んでいないことが病理報告書において示される必要がある.切除検体の方向(頭側,尾側,内側,外側,皮膚側,胸筋側)が正確に示されていること,浸潤癌成分・非浸潤癌成分の断端波及について方向・距離が記載されていることも重要である.CAPのプロトコールでは,癌組織が断端に露出(距離0mm)していれば陽性と記載し,断端陰性の場合は各方向断端からの距離を記載(側方,皮膚側,浸潤癌で胸筋への浸潤がある場合は胸筋側も)することが推奨されている2).Ⅲ 乳癌の生物学的特性の診断と組織学的治療効果判定乳癌の生物学的特性の指標には,組織型,グレード,ER, PgR,HER2, Ki- 67陽性細胞率などが含ま