カレントテラピー 33-11 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.11 331083Ⅰ はじめに原発性乳癌の診療の基本は外科的切除であるが,この十数年間で,縮小手術(乳房温存療法,センチネルリンパ節生検),術前・術後の補助薬物療法(内分泌療法,化学療法,分子標的療法)のいずれの分野でも大きく様変わりした.病理診断部門でも,以前は組織型診断と腫瘍径,リンパ節転移個数の記載で十分であったが,近年では従来からの原発腫瘍の最大浸潤径(pT因子),リンパ節転移の程度(pN因子)に加えて,切除断端の状態,ホルモン受容体〔エストロゲン受容体(ER),プロゲステロン受容体(PgR)〕,HER2,細胞増殖性の指標(Ki - 67やグレード),薬物療法に対する組織学的治療効果,などについての判定と記載が望まれるようになった.ことに近年は,ER, PgR, HER 2 と細胞増殖の指標などから浸潤性乳癌を,①ホルモン受容体陽性のluminal型(HER 2陰性かつ増殖性が低いluminalA-like,HER 2陽性またはHER 2陰性で増殖性が高いluminal B -likeに細分される),② HER 2陽性かつホルモン受容体陰性のHER 2型,③ホルモン受容体,HER 2いずれも陰性のトリプルネガティブ型乳癌(triple negative breast cancer:TNBC)からなる“サブタイプ”に分類し,組織型,pT, pN,切除断端の状態等と併せて評価して治療戦略が考えられることが多い1).さらに標準治療のガイドラインやコンセンサスに基づく診療が推奨され,病理診断においても精度,標準化が問われるようになってきて,各評価項目が全国的・国際的に標準化されることが要求されつつある.College of American Pathologists(CAP)ではAmerican Joint Committee on Cancer(AJCC)/Union for International Cancer Control(UICC)のTNM分類第7版に基づいて乳癌患者からの外科切除標本の病理診断に関するプロトコールを配布し標準化に努めている2).またわが国でも乳癌取扱い規約に切除標本の取り扱いや切り出し法など,重要な事項が記載されている3).本稿では現在の日常診療において原発性乳癌の手術標本で検索される病理学的指標について解説し,今後の病理診断の動向についても考察してみたい.* 防衛医科大学校病態病理学教授がん診断と治療の最近の動向─ 個別化医療の発展乳癌診療における病理診断津田 均*乳癌診療における病理診断の役割は腫瘍浸潤径,リンパ節転移,切除断端の状態,ホルモン受容体,HER2, Ki-67,組織型,グレードの判定,薬物療法に対する組織学的治療効果判定などがある.近年は,治療の標準化の重要性が強調され,これらの診断項目についても国際化,標準化が要求されつつある.研究面でも新たな治療法やバイオマーカー開発や基礎研究支援など,さまざまな面で病理部門は関与しているが,これらの多くのことに対応するための病理部門の環境整備は肝要と考える.