カレントテラピー 32-5 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.5 61475壊が進行しすぎないこと,④全身的合併症(感染巣,皮膚状態,糖尿病,心,腎,肺)の十分な評価,可能な限り治療がされていること,が挙げられる.長期的には薬物治療の成否が手術成績を含めて,患者の機能的な予後に大きく関与する.手術前のみならず,手術後も薬物治療を徹底することはきわめて重要である.関節単純X線所見による関節破壊程度の判定は手術時期や術式決定の指標となり,Larsen gradeによるX線所見の評価法が一般的(表)1)である.特に,大関節においては人工関節置換術を選択するかどうかの大きな決定因子となる.一般的にLarsen gradeⅠ, Ⅱに相当する関節破壊が軽度の場合には滑膜切除が,Larsen gradeⅣ, Ⅴでは手関節などでは関節形成術,大関節においては人工関節置換術に適応がある.一方,RAは多関節障害であるため,放置による近隣関節の進行も含めて手術時期を考慮する必要がある.関節機能は,骨軟骨の損傷程度のみならず,靱帯,関節包など他の軟部組織の状態,すなわち関節の拘縮,筋力にも依存する.これらが術後十分に回復する時期に手術を行うことは,手術の効果を最大限得るためにはきわめて重要である.下肢荷重関節では関節破壊が急速に進行することがあるので,経過を観察し,破壊が高度となる前に手術治療を選択する必要がある.長期間移動困難や寝たきりの状態が続くと,筋萎縮,関節の拘縮が進行し手術の難易度が高まり,術後成績や術後リハビリテーションの長期化などの悪影響が起こる.手術患者は長期罹病患者がほとんどであり,全身的合併症の術前評価は重要である.Ⅲ 滑膜切除術滑膜切除術とは炎症性滑膜を切除し,疼痛の軽減を図るものであり,以前は対症療法として行われることが多かった.当然,骨軟骨の構造的破壊についての改善効果は期待されないため,骨,軟骨の損傷が比較的軽度の場合に選択される.滑膜切除の関節破壊抑制効果については明らかでなく,現在の薬物療法の効果により,その実施は明らかに減少してきていると思われる2).一方,薬物療法の結果,残存する滑膜炎に対するステロイド関節注射の試みの報告もあり3),4),薬物療法のコントロール下において,残存する滑膜炎に対して外科的滑膜切除を考える症例は存在すると考えられる.しかしながら,エビデンスは乏しく,今後の課題である.実施する場合は,可能であれば関節軟部組織に対する侵襲を最小限にするため,関節鏡視下に行われることが望ましい.1 上肢各関節における滑膜切除術の適応1)肩関節肩関節の手術治療は疼痛に対する処置として限定的に行われ,鏡視下滑膜切除,または直視下滑膜切除が選択される.解剖学的な特徴から滑膜をすべて切除することは困難である.短期成績は良好とされるが,疾患活動性の高い症例では効果は一過性にとどまる.2)肘関節肘関節屈曲は摂食動作などに必要で,可動域制限が明らかとなれば手術治療を考える.Larsen gradeⅠ, Ⅱの早期例で明らかな増殖性滑膜炎を認める症表 Larsenによるgrade分類Grade0 正常.変化はあっても関節炎とは関係ないもの.GradeⅠ 軽度の異常. 関節周囲の軟部腫脹,関節周囲のosteoporosis,軽度の関節裂隙狭小化のうち1つ以上が存在する.GradeⅡ 初期変化,骨びらんとの関節裂隙狭小化.骨びらん(1個ないし数個)は非荷重関節では必須.GradeⅢ 中等度の破壊.骨びらんとの関節裂隙消失.目立った骨びらんは荷重関節では必須.GradeⅣ 高度の破壊.著しい骨びらんとの関節裂隙消失.軟骨下骨の著しい不整GradeⅤ ムチランス変形.もとの骨の輪郭は破壊されている注:参照とするために関節ごとに各gradeのstandard filmが発表されている.〔参考文献1)より引用改変〕