カレントテラピー 32-5 サンプル

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60 Current Therapy 2014 Vol.32 No.5474Ⅰ はじめにメトトレキサート(methotrexate:MTX),腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor:TNF)阻害剤を主とする生物学的製剤(Bio)による,疾患活動性,炎症の制御,および関節破壊抑制効果が多くの臨床試験で明らかとなった.このエビデンスを基に関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)治療は大きく変化した.治療目標は「寛解;関節炎の兆候はせいぜい1関節に残存する程度の状態」といわれるようになっている.事実,かなりの関節炎が制御可能となっているが,この寛解基準を達成する患者は日常診療上2~3割といわれる.すなわち,大半の患者において数個の関節炎は残存するか,もしくはすでに不可逆的関節破壊が存在することがわかる.言い換えれば,多くの患者において全身的薬物療法に抵抗する関節局所の病態が存在しているということであり,関節局所に対する介入を要する患者が少なくないといえる.さらに,構造的破壊自体の回復は薬物療法では不可能である.これらの点を踏まえ,全身的炎症の抑制下で,手術はきわめて有効な局所療法といえる.RA患者に対する関節手術の基本的な目的は不可逆的関節障害において①支持性,②運動性(可動域),③無痛性の回復と,日常生活動作(ADL)の改善と生活の質(QOL)向上を図り,その状態を維持することである.もう一つの可能性は薬物療法の補助として,残存する炎症を除去し関節破壊の抑制に寄与することである.本稿では,RA患者に対して行われる関節手術のうち,滑膜切除術および関節形成術について概説する.Ⅱ 手術治療の選択についての原則手術の決定において重要な点として,①患者自身が,手術の目的,限界を理解し治療に対する積極性をもつこと,②薬物治療が徹底され,炎症による疾患活動性が可能な限り低下していること,③関節破滑膜切除術,関節形成術小嶋俊久*関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の薬物療法が進歩し,炎症がコントロール可能となれば,RAに対する関節手術も変化してくる.薬物療法が十分に行われない場合,関節手術は対症療法として行わざるを得ない.今日の薬物治療によるコントロール下において,手術療法による身体機能維持,さらには向上の可能性,残存する関節への局所療法としての位置づけも出てきた.すなわち,今後さらに,より高いレベルでの疾患活動性コントロール,身体機能向上のための手術(滑膜切除,関節形成術)を考えるべきである.* 名古屋大学医学部附属病院整形外科講師関節リウマチ―診断と治療の進歩