カレントテラピー 32-2 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.2 27127Ⅰ はじめにカナダの医療制度の基本は国民皆保険であり,それを支えるプライマリケア医の家庭医は1),家庭医協会を組織し,その歴史は50年を越える1),2).家庭医不足が主因と考えられる近年のプライマリケアの質の低下に対して3),家庭医協会はさまざまな改革を始めた4),5).本稿では,カナダの家庭医の歴史や役割を踏まえ,現状の問題点や展望を考察する.Ⅱ 家庭医の歴史1867年英国領の北米自治区としてカナダ連邦は始まったが,当時の北米の医師の多くは英仏からの移民であった6).当時より医師は専門医制度や組織をつくり始め,プライマリケア医であったGeneral physician(以下GP)を締め出す傾向にあった6).1929年,The Royal College of Physicians and Surgeons ofCanada(以下,カナダ専門医協会)が専門医の職業団体として設立され,ますますGPの社会的地位は低くなった.GPの多くが自分たちの存在に危機感をもった1),2),6).1954年6月,400名のGPがCanada Medical Associationより1万ドルの財政的支援を受け,初代MurayR Stalkerを会長にThe College of General Practiceof Canadaを設立した1),6).セカンドクラスと揶揄されていたGPの医学界での地位向上を目指す団体であったが1),設立の目的として〈広範囲なGPの教育を目的とした学術的な団体〉と第一に記されている6).Collegeの設立当時,ポリオや結核が流行し,GPが一般診療に加え公衆衛生的な予防医学を担うことになる1).1957年に国民皆保険の基礎となる法案がカナダの家庭医療濵田久之*1・Samuel Lapalme-Remis*2カナダの医師の約半数は家庭医であり,職業団体であるThe College of Family Physicians ofCanada(以下,家庭医協会)を組織している.日本と類似した国民皆保険をもちヘルスケアの維持発展に貢献している家庭医協会は,4つの原則をもち,それに従った教育方針が,卒前から卒後そして生涯教育までつながっている.国民の家庭医に対する信頼は非常に高かったが,家庭医不足に始まるプライマリケアの質の低下が顕著になり,国民の不満も近年上昇している.これに対して家庭医協会は,2020年までに「全国民が自分の家庭医をもつ」目標を掲げさまざまな改革に着手している.また,広大な国土においては地域間の医療格差も深刻であり,地方に医科大の新設などを行い改善に努力している.現在多くの問題を抱えているが,家庭医制度および家庭医は国のヘルスケアの根幹であることは間違えない.*1 長崎大学病院医療教育開発センター教授*2 オタワ大学医学部総合診療―その歴史と現在,未来