カレントテラピー 32-2 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.2 7107総合診療― その歴史と現在,未来―企画聖路加国際病院院長福井次矢わが国では長年,総合診療は専門臨床分野とみなされてこなかったが,2013年4月にまとめられた厚生労働省の「専門医の在り方に関する検討会」報告書において,わが国の専門医制度のなかで基本領域専門医のひとつとして総合診療専門医が組み入れられることが正式に決まった.今後解決すべき課題は山積しているものの,国が関わるこの決定によって,総合診療の着実な発展,ひいてはわが国の医療提供体制の大きな改善がようやく視野に入ってきた.1980年代以降,総合診療に深く関わってきた私にとって,過去の約30年間を振り返ると,ほぼ10年単位で,そのときどきの社会的背景のもと,総合診療の必要性が大きな話題となってきたようにみえる.1980年代半ばの「家庭医」論議,1990年代の大学病院と臨床研修病院における総合診療部創設ラッシュ,そして,2000年代に入ってからの「総合医」構想である.今般の「専門医の在り方に関する検討会」報告書は,診療科間および地域ごとの医師偏在,震災被災地での総合診療医の活躍,日本医師会生涯教育カリキュラム〈2009〉作成・施行過程での総合医論議,プライマリ・ケア関連3学会の合同,さまざまな団体からの「総合医体制」提唱,専門医制度全般の見直しの必要性などといった,最近の社会状況を色濃く反映するものである.一方で,総合診療が医学生や若い医師に受け入れられるかどうかは,従来の「ヒトを細分化して客観的にみようとする医科学」と「病む人を総合的な視点から診ようとする医療」との価値観の対立問題でもあり,総合診療医として明確なキャリア・パスを思い描くことができるかどうかという社会体制の問題でもある.また,長年医療に携わってきた医師にとって,総合診療は「資格取得」の問題でもあり,「患者の受療行動への影響」,ひいては「収入」の問題でもある.総合診療をめぐる課題は山積しており,よりよい医療をより多くの国民が享受できるよう,未来を見据えた制度設計がなされなくてはならない.本号では,総合診療を特集テーマに,その必要性,海外での状況,わが国における歴史と現状,新たな専門医制度における課題などを採り上げた.有り難いことに,各論文テーマに関して経験豊富かつ最も造詣の深い先生方に執筆をお引き受けいただくことができ,結果として,本号は現時点における「わが国における総合診療の全体像」を知るうえで最も優れた情報源となることと思う.総合診療について考えるうえで,本書がすべての関係者の参考になることを祈念する次第である.ようやく専門医制度に組み込まれる「総合診療」