カレントテラピー 32-2 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.2 29海外の総合診療129なるであろう.Ⅳ 家庭医の教育制度カナダの医学部進学は原則的に4年大学卒業後である(ケベック州等では異なる).すべての医学部には家庭医学科が設置されている.上記の4つの原則に従った協会が示すプログラムに沿って,卒前教育と2年間の卒後研修が行われる11).卒前教育は大学により異なるが,1~2年次の講義,3~4年次に臨床実習(クラークシップ)で家庭医学を学ぶ.クラークシップは80週前後で,おおむね4週間を家庭医学科に費やしている12).公衆衛生も4週前後,地域医療も2~4週前後を設けているのでプライマリケア関連の実習時間は日本より長い.カリュキュラムの内容は協会主導で各大学から集まる卒前教育プログラム責任者らが情報交換をしながら作成するので大学ごとの大きな差はないように思える.実習場所は,開業している家庭医のオフィスであり,開業医(preceptor, clinical teacherとよばれ,大学のfacultyとなっている)が指導医として教える.通常,半日に6~7人の患者を指導医とともに学生が診る.午後も外来業務をする場合もあるし,家庭医は病院で勤務する場合もあるので,病院実習する場合もある.産科のオンコールや救急のオンコール実習等もある12).4年生の冬には,マッチングを受けて研修する大学を選択する(研修プログラムは大学にしかない)が,日本のマッチングシステムと異なり,あらかじめ診療科ごとの割合が決められている12).卒後研修は,いわゆるストレート研修である.プログラムは家庭医協会が示す基準により各大学が作成し,評価委員会より定期的に評価され認定されている13).例えば,トロント大学のプログラムは,2年間で8カ月家庭医療を選択,2年次は2カ月のへき地研修が義務となっている.残りのコアローテーションは,内科,外科,産婦人科,小児科,精神科,老人科,ICU/救急である14).2年の研修が終了した後,協会の認定試験を受けて合格すれば原則的には開業し自分のオフィスを構えることができるが,3年目以降のさまざまなフェローシッププログラムが大学では準備されている14).例えば,終末期医療分野,内科専門科分野,外科分野,救急分野,精神科分野など大学ごとに特徴あるプログラムを準備し優秀な人材を獲得しようとしている.また,修士課程に進み研究や教育の道を志す研修医もいる.生涯教育も協会が担い,学会参加や自主学習等の学習機会を与えている11).Ⅴ 家庭医の仕事家庭医の62%は自分の診療所を主な働く場所としており15),平均労働時間は週に49時間(月から金の日中)であるが,70%の家庭医が17時以降のオンコールを受けており,それを含めると週75時間以上働いている2).さらに,近年の社会背景の複雑化,患者の病態の多彩化により,家庭医の守備範囲が広がったことが,時間以上に精神的な負担となっている面もある.約半数の家庭医が2カ所以上の仕事場をもつ.自身の診療所のほかに,44.2%が地域病院での入院患者の診療2),24%が救急部,25%が長期療養所,12%が教育機関など15)である.さらに業務内容も多彩であり,家庭医の50%が慢性疾患管理,49%が産婦人科,41%小児科,41%が精神療法,36%が緩和療法,28%が救急医療,22%が中毒医学(禁煙外来など),22%が在宅療法などを行っている15).2000年代に入ると,カナダの家庭医のネットワーク診療化は連邦政府の基金等により大きく進んだ16).グループ化により,医療機関へのアクセスや家庭医の過重労働を改善し,医療資源を有効に使えるということが目的である.都市部,へき地部にかかわらずグループ診療化が進んだ.通常10人前後の医師がひとつのグループを形成し,運営などはグループ独自で決める.その各グループにコメディカルの派遣や診療録のIT化の経済的補助が受けられる(金額や補助内容は,州,地域等により異なる).2005年頃より具体化し,グループ診療化はほぼ終了しているようである.