カレントテラピー 32-2 サンプル

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28 Current Therapy 2014 Vol.32 No.2128可決し,カナダの医療は公的に運営される方向へ転換してゆき,GPの役割も専門医の補助的なものから公的な予防医療も含むプライマリヘルスケア従事者へ変化した7).1968年,Collegeは英国よりIranMcWhinneyを招聘し,University of WesternOntarioにカナダ初の(北アメリカでは2番目)家庭医学科の教授を誕生させた.彼は,卒前,卒後教育の教育カリキュラムの作成などに尽力し,A TextBook of Family Medicine8)を記し,現在カナダのみならず世界中の学生に読まれている家庭医学の入門書となっている.1967年The College of Generalphysicians of CanadaからThe College of FamilyPhysicians of Canadaへ名称変更して,GPからfamily physicianとよぶようになり,この呼び方が国民にも定着した6).Ⅲ 家庭医の4つの原則カナダのプライマリケアを担う家庭医の役割は,日本に類似した国民皆保険システムのうえに成り立っている.さまざまな変遷を経て,1984年,CanadaHealth Act(カナダ連邦政府による全州に適応される連邦法)により家庭医によるプライマリケアと公的皆健康保険システムをカナダは全土に導入し,家庭医の公衆衛生的な分野での役割はさらに大きくなった9).Canada Health Actは,下記の5つの原則よりなる10).1)Public administration;健康保険は非営利的目的で州または地域により運営される.*カナダの病院は公的または非営利団体(宗教法人など)で経営されている.私立病院はない.2)Accessibility;医療サービスへのアクセスは平等である.*原則,国民は家庭医を選び,家庭医を通して,病院または専門医にかかる.3)Universality;公的医療保険はすべての被保険者に与えられる.*診療費,入院費などは無料.薬剤費,歯科費,メガネなどの眼科費は,個人負担となるので,多くの人(約3分の2程度)は,私的健康保険にも加入している.4)Comprehensiveness;必要な医療サービスは病院と医師により包括的に保証される.5)Portability;カナダ全土において公的医療保険は適応される.Canada Health Act施行の翌年に,家庭医協会は,家庭医学の4つの原則を発表した1),2).1)家庭医は,技術を修得した臨床医である.2)家庭医学は,地域に基づく医学である.3)家庭医は,人々の資源である.4)医師患者関係は,家庭医学の中心である.カナダの保健政策と家庭医制度は連動して発展しており,1985年には医師数の50%以上が家庭医となり,1986年には家庭医協会は医学部の臨床実習でも家庭医学を導入すべき方針を打ち出し,1,000人以上の家庭医が大学の教員として働くようになっていた1),2).1992年連邦政府機関(The Federation of MedicalRegulatory Authorities of Canada)は,カナダ全土で開業できる免許をとるためには,Medical Councilof Canadaの国家試験と家庭医協会または専門医協会の認定医試験に合格しなければならないという新制度を導入した2).学力試験(大学4年)と実技試験(研修医1年)による国家試験に合格し,研修期間終了時に受験する(家庭医研修は2年,内科は3年,一般外科は5年)認定医試験に合格し臨床医となる.これにより医師専門職団体(専門医協会と家庭医協会)の権限はさらに強化されると同時に,医師の生涯教育に対して責任を負うこととなり,95年より家庭医協会は生涯教育プログラムを開始した1).この新制度以降,すべての新医師は,専門職団体に所属することとなり,家庭医=家庭医協会員となったが,旧制度の医師で,家庭医協会に所属しない家庭医はGeneral physicianとよばれるようになった.カナダのプライマリケアを担っているのは家庭医協会所属の家庭医約28,000人(2012年)と非所属のGeneral physician約11,000人(2006年)である2)~4).一般的には,家庭医とGPの業務内容に変わりはなく,国民はこの区別を認識してない.GPの多くが高齢層であり近い将来プライマリケア医は家庭医のみと