カレントテラピー 32-10 サンプル

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54 Current Therapy 2014 Vol.32 No.101002Ⅰ 骨芽細胞とは骨量は骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収のバランスが保たれることで一定に維持される.骨芽細胞は,間葉系幹細胞を起源とする20- 30μm程度の細胞で,Ⅰ型コラーゲンのほか,オステオカルシン,オステオポンチン,骨シアロタンパクなどの非コラーゲン性タンパク,デコリンなどのプロテオグリカンを合成,分泌するとともに石灰化を司り,骨形成において中心的な役割を果たす.生体内で,骨を形成する間葉系幹細胞は骨膜直下の細長い線維芽細胞様の細胞として存在するが,しだいに骨表面へと移動するとともに分化を遂げ,骨表面に1列に並んで接着した立方体様の骨芽細胞へと形質を変える.その後,骨芽細胞の多くはアポトーシスにより死滅するが,一部は,自らの産生した石灰化基質に埋もれ,骨細胞へと終末分化を遂げる.成体における骨芽細胞の起源には不明な点が多い.骨髄内に間葉系幹細胞様の細胞が存在し,培養条件により脂肪細胞,骨芽細胞,軟骨細胞などに分化すること,さらに,皮下に移植することで異所性に骨を形成することから,骨芽細胞の起源のひとつは骨髄と考えられている.また,最近では脂肪や筋肉にも間葉系幹細胞様細胞が存在することが報告されているが,骨形成における生理的な意義は明らかではない.Ⅱ 転写因子による骨芽細胞分化調節1 Runx2骨芽細胞の分化は種々の転写因子により巧妙に制御されている.Runx 2は骨芽細胞に特異的に発現する転写因子として同定され,骨に豊富に存在するオステオカルシン,Ⅰ型コラーゲン,オステオポンチンのプロモーター領域に核内で結合し,それらの転写を活性化する1).また,Runx 2欠損マウスは骨芽細胞を完全に欠失し,ヒトやマウスではRunx 2のヘ骨芽細胞分化の制御機構竹田 秀*骨芽細胞は間葉系幹細胞に由来し,Runx2, Osterixをはじめとする転写因子やBMP2, Wntなどの液性因子により,巧妙にその分化が調節されている.以前から,生体では骨形成と骨吸収のバランスが一定に保たれていること(骨代謝のカップリング)が知られていたが,その分子機構は不明であった.最近,成熟破骨細胞が分泌する液性因子がいくつか同定され,骨代謝のカップリングを担う分子として注目されている.また近年,従来の液性因子に加えて,臓器間のネットワークを介して,神経系や血管系が骨芽細胞の分化や骨形成に重要な働きをすることが明らかとなり,新たな骨形成調節機構として研究が進められている.* 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科細胞生理学分野教授/科学技術振興機構CREST研究代表骨粗鬆症の診断と治療― 新たな展開