カレントテラピー 32-10 サンプル

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8 Current Therapy 2014 Vol.32 No.10956Ⅰ はじめに沈黙の疾患である骨粗鬆症は,脆弱性骨折を生じて初めて臨床症状をもたらすと考えられる.骨粗鬆症を診断し治療する目的は脆弱性骨折の予防であるため,骨折がなく臨床症状を有していなくても骨折リスクが高い例が骨粗鬆症と診断される必要がある.骨折リスクには骨密度をはじめとする種々の要因が関与するため,診断基準はこれに基づいて設定されるとともに,臨床的に簡便である必要がある.わが国では1988年に厚生省研究班によって診断基準作成の試みがなされ,種々の変遷を経て2012年度に最新の改訂が行われた.Ⅱ 骨粗鬆症の定義骨量は加齢に伴って減少するため,以前には椎体骨折を有する症例のみを骨粗鬆症と診断すべきとする研究者もみられた.しかしながら糖尿病では無症状であっても心血管イベントが発生する前に,また高血圧では脳血管障害を発症する前に,その予防を目的に診断がなされ,治療が開始される必要がある.そこで,これらの疾患と同様に骨粗鬆症も骨折を発生する以前に診断されるべきであるという考えに基づき,第4回国際骨粗鬆症シンポジウム(1993年)で「低骨量と骨梁構造の悪化が特徴で,その結果,骨の脆弱性が亢進し,骨折しやすい状態にある全身的な骨疾患」という定義のコンセンサスが得られるに至った.したがって臨床症状を有していなくても,骨脆弱化があれば骨粗鬆症と診断される.その後,骨密度のみで骨強度を説明することが困難な事実が明らかにされた.例えば,フッ化ナトリウムの臨床試験の結果では,高用量を服薬すると腰椎の骨密度が増加するにも関わらず,椎体骨折の発生頻度を低下させることはできず,逆に四肢骨折の頻度を増加させた1).またステロイド投与例では骨密度低下を認めなくても骨折リスクが上昇することが広く知られている.このような知見が得られた結原発性骨粗鬆症の診断基準―2012年度改訂版―萩野 浩*世界保健機関(WHO)が1994年に骨密度に基づいた骨粗鬆症の診断基準を提唱した.わが国でもこのWHOの診断基準を原型として1995年に現在の原発性骨粗鬆症診断基準のもととなる基準が日本骨代謝学会により策定され,2度の改訂の後,2012年度に最新の改訂が行われた.この診断基準の最大の特徴は,椎体または大腿骨近位部骨折があれば,骨密度に関わらず骨粗鬆症と診断される点である.原発性骨粗鬆症の診断には鑑別診断が欠かせず,低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患の除外を行ったうえで診断基準を用いることが重要である.* 鳥取大学医学部保健学科教授/鳥取大学医学部附属病院リハビリテーション部部長骨粗鬆症の診断と治療― 新たな展開