カレントテラピー 32-10 サンプル

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74 Current Therapy 2014 Vol.32 No.101022ことは間違いない.しかしそれ以上にこの疾患が問題であるのは,2つの理由による.1つ目は,椎体骨折が新たに起こる椎体骨折の危険因子になり得ることである.既存椎体骨折が1つあると将来の椎体骨折は3.2倍,2つあると9.8 倍になるというデータが示すごとく4),いわゆるドミノ骨折の危険性がある.2つ目は,椎体骨折が生命予後に影響を与えることが明らかになっていることである.椎体骨折が1個である場合はないものと比較し死亡率に差がなかったが,2個であると2倍,3個であると3倍になったという報告がある5).このことは椎体骨折の数が増えるにつれて死亡率が増加していることを意味しており,他の論文においても指摘されていることである6).したがって,椎体骨折についてはこれら臨床症状と予後への対応が喫緊の課題である.Ⅱ 椎体骨折の治療におけるvertebroplastyの位置づけ,適応椎体骨折が生じた場合は,まずは保存的加療(安静,コルセット,体幹ギプスなど)が行われる.その理由として骨折による疼痛は,骨折の治癒により臨床的に問題なく軽快する例が多いからである.しかしなかには変形治癒や偽関節が生じ,臨床症状をきたす症例がある.椎体骨折後の偽関節は10.6~34.8%に生じることが報告されており,その危険因子は椎体後壁損傷,胸腰椎移行部の骨折,MRI, T2強調像で高輝度限局性変化,広範な低輝度性変化,であるとされている7).しかも,現在のところ保存療法のうち偽関節の発生を防止するため具体的に確立された治療法はない.千葉らは骨粗鬆症性椎体骨折に対する保存療法の指針策定を目的に,I群:3週ベッド安静,体幹装具9週,Ⅱ群:体幹固定12週,Ⅲ群:体幹装具を付けて離床,の3群に分け,前向き研究として骨癒合率の比較を行ったが,いずれにも有意差は得られなかったと報告している8).椎体形成術は椎体骨折後の疼痛が強い症例に行われる.2013年に出された指針によると,椎体形成術の具体的な適応は,椎体骨折後骨癒合が得られず遷延治癒となった例で著しい体動痛のためADLの制限をきたす場合であるとしている9).ちなみに椎体骨折治療研究会により,遷延治癒(delayed union)とは骨折受傷または骨折によると思われる腰背部痛の発生から3カ月以上6カ月未満を経過して椎体内に異常可動性が残存し,骨癒合が得られていない状態で,一方,偽関節(pseudoarthrosis)とは骨折受傷または骨折によると思われる腰背部痛の発生から6カ月以上経過しても椎体内に異常可動性が残存し,骨癒合が得られていない状態であると定義する,という提言がなされている.したがって,この提言によると骨折後3カ月経過しても強い痛みが継続する症例に椎体形成術が考慮されることになる.椎体形成術には内部に注入するマテリアルとして,骨セメントであるpolymethylmethacrylate(PMMA),顆粒であるhydroxyapatite(HA),重合熱をほとんど発しないcalcium phosphate cement(CPC)が臨床的に用いられている.このうち風船を用いて椎体高を整復し,そのできた間隙にPMMAを充填する経皮的後弯矯正術(balloon kyphoplasty:BKP)は2011年よりわが国で保険適用とされ,以来多くの症例に使用されている.この手技の適応は原発性骨粗鬆症による1椎体の急性期脊椎圧迫骨折で,十分な保存加療によっても疼痛が改善されない症例である.これに対して保存療法における医師の考え方の違いから,偽関節に陥る危険性が高い症例には早期に行うことを考慮すべきという議論もある.しかし,一般的なコンセンサスとしては,少なくとも3~4週以上の保存療法の後,BKPの適応を決めるべきであると考えられる.また現在では,BKPは多発性骨髄腫あるいは転移性骨腫瘍による3椎体までの有痛性脊椎圧迫骨折で,既存療法に奏効しない,または奏効しないと考えられる症例にも適応が拡大された.本術式は以下の施設基準が明示されている.それは,①全身麻酔下およびX線透視下でBKPを実施可能な施設,②合併症発生時には,速やかに全身麻酔下での脊椎除圧再建術や,血管修復術などの緊急対応を行うことができる施設,③本機器を使用した手術は,脊椎外科の専門知識を有し,本システム特定のトレーニングを受けた医師のみが行うこと,である.適応禁忌としては,対象椎体後壁の骨折がCTで