カレントテラピー 32-10 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.10 731021Ⅰ はじめに椎体骨折に関する英語の文献にはosteoporoticvertebral fracture(OVF)(骨粗鬆症性椎体骨折)との記載が多い.すなわち多くの椎体骨折は骨粗鬆症を基盤に軽微な外傷が加わって生じるものと考えられている.用語として,これまでは椎体に加わる力の方向を考慮して椎体圧迫骨折(compression fracture)が頻用されていた.これは一般に椎体の前方部分(anterior column)のみの損傷を示す.しかし,骨粗鬆症性椎体骨折では椎体後壁(middle column)の損傷を伴うことがあるため,ここでは椎体骨折という用語に統一し,これに後壁損傷ありとなしを区別して用いることとする1).椎体骨折の診断は,胸椎および腰椎の単純X線を用いて定量的評価法および半定量的評価法で行うことが2012年に確認された2).またこの方法ではMRIによる評価も付記されている.臨床現場では椎体骨折を疑った場合,単純X線,CTおよびMRIを合わせて正確な骨折形態を評価している.わが国における椎体骨折の頻度は,70歳代前半では25%,80 歳以上では43%であると報告されており3),日常臨床上非常によくみられる疾患である.椎体骨折がもたらす症状は,①腰背部痛,②脊柱の変性・姿勢異常,③脊髄,馬尾,神経根障害,④呼吸器系の障害,⑤胃食道逆流症(gastroesophagealreflux disease:GERD)に代表される消化器系の障害などである.これらの症状自体が患者の日常生活動作(activity of daily living:ADL)を低下させる椎体圧迫骨折に対する椎体形成術vertebroplasty川口善治*1・安田剛敏*2・関 庄二*3・堀 岳史*4椎体形成術にはpolymethylmethacrylate(PMMA),hydroxyapatite(HA),calciumphosphate cement(CPC)が用いられる.このうち風船を用いて椎体高を整復し,その間隙にPMMAを充填する経皮的後弯矯正術(balloon kyphoplasty:BKP)は近年多くの症例に使用されている.本手技は原発性骨粗鬆症による1椎体の急性期脊椎圧迫骨折で,十分な保存加療によっても疼痛が改善されない症例に適応される.よって少なくとも3~4週以上の保存療法の後に適応を決めるべきである.禁忌としては椎体後壁の骨折がCTで確認された場合である.最近はこのような症例にも試みられているが,合併症が起こらないように慎重に適応を選ぶべきである.また,BKP後の問題点として隣接椎体骨折が挙げられる.テリパラチドは隣接椎体骨折の頻度を低下させる可能性が示されている.vertebroplastyは低侵襲で早期に症状を軽快させる有効な手術手技であるが,椎体骨折に対しては保存療法が奏効する例がある.よって今後は保存療法を考えたうえで椎体骨折に対するvertebroplastyの治療的位置づけを考えていく必要がある.*1 富山大学医学部整形外科准教授*2 富山大学医学部整形外科講師*3 富山大学医学部整形外科助教*4 富山大学医学部整形外科骨粗鬆症の診断と治療― 新たな展開