カレントテラピー 32-10 サンプル

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カレントテラピー 32-10 サンプル

Current Therapy 2014 Vol.32 No.10 57骨粗鬆症研究の最前線1005Wntシグナルを抑制することで骨形成を低下させる(図2).sclerostinはvan Buchem病など,骨量の増加,骨硬化を特徴とする疾患の原因遺伝子として同定されたSOSTがコードするタンパク質であるが,興味深いことに,骨形成促進薬として使用されるヒト副甲状腺ホルモン1- 34(テリパラチド)をマウスに投与するとsclerostinの発現が低下する13()図2).また,メカニカルストレスに呼応して骨形成は活性化するが,この際も同様に骨細胞におけるSclerostinの発現が低下する.さらに,SOSTノックアウトマウスにおいては,通常認められる荷重の低下による骨量低下が生じない.最近では,OVXモデルを用いた検討において,抗sclerostin中和抗体の投与で,皮質骨,海綿骨の骨形成が著明に亢進することが示されており(図2),新しい強力な骨形成促進薬として臨床試験が行われている.3 NotchNotchシグナルは細胞間の情報伝達を担う経路のひとつである.隣接する細胞表面に発現するDeltaやJaggedといったリガンドにノッチ受容体が結合し,ノッチシグナルが活性化されると,ノッチ受容体の細胞内ドメイン(NICD)は切断され,核へと移行する.この切断の際に,γセクレターゼがプレセニリン1(PS1)や2(PS2)と協調的に作用することが知られている.核へと移行したNICDは,標的となる転写因子HESやHEYを活性化する.引き続いて,HESやHEYはRunx2の転写活性を抑制する(図1).ノッチシグナルが抑制されたPS1, 2二重欠損マウスやノッチ受容体欠損マウスでは,骨形成が亢進し,骨量が増加する14).また,これらのマウスでは間葉系幹細胞の減少を伴うことから,ノッチシグナルは間葉系幹細胞から骨芽細胞への初期の分化において重要な機能を担っているものと考えられる14).ヒトにおいても,ノッチ受容体の点突然変異により骨形成の異常が惹起されることが示されている.古典的WntLRP5/6sFRPGSK3βFrizzledDsh骨芽細胞分化TCF/LEFβ-Cateninβ-Cateninβ-Cateninβ-CateninSclerostin中和抗体PTH製剤?図2Wntシグナルによる骨芽細胞分化の調節機構Wntタンパク質が,細胞膜に発現しているWnt受容体であるfrizzledタンパク質および共受容体であるLRP5と結合することでシグナルが伝達される.また,生体内において,Wntシグナルは,種々の阻害因子による調節を受けており,これらの阻害は骨芽細胞分化および骨形成を促進する.RANKL骨形成骨吸収pCREBα2-AchRRANK交感神経系副交感神経系ATF4Adrb2-R感覚神経系骨芽細胞破骨細胞図3 神経系による骨代謝調節機構交感神経系は,骨形成を抑制すると同時に,RANKL発現を誘導し,骨吸収を促進する.感覚神経系は,骨形成維持に重要である.