カレントテラピー 32-1 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.1 77インフルエンザ診断と治療の最前線― 抗インフルエンザ薬の時代を迎えて―企画九州大学先端医療イノベーションセンター特任教授池松秀之抗インフルエンザ薬であるノイラミニダーゼ阻害薬(neuraminidase inhibitor:NAI)が開発され,これは人類がコンピュータグラフィックの技術を利用して開発した最初の薬剤であるといわれている.日本ではNAIとしてザナミビルおよびオセルタミビルが健康保険の適用となり,2000年以降,世界に先駆けて,迅速診断キットを利用した早期診断と発症48時間以内の早期からのNAIによる治療が普及した.その結果として,インフルエンザ肺炎の減少やインフルエンザに対する抗菌薬の使用減少などの変化が現れてきていると思われる.A型インフルエンザウイルスは遺伝子分節の交換により大きく変化し,新型インフルエンザとして大きな流行(パンデミック)を起こす.過去の新型インフルエンザの出現時には多数の感染者と死亡者がみられており,新型インフルエンザの出現による大きな被害が懸念されていた.2009年4月メキシコで確認されたブタ由来とされるA(H1N1)pdmウイルスは,その後世界中で大きな流行をみせ,多くの国で多数の患者の発生と死亡例が報告された.日本でも2009-2010年のインフルエンザ流行期に感染者は2,000万人以上であったと推定されているが,関連した死亡者数はおよそ200名であり,世界の他の国に比較して著しく低かったことが報告されている.医療へのフリーアクセスとインフルエンザの早期診断,早期治療という日本の診療体制の優位性が示されたと思われる.新型インフルエンザの出現から1年経過した2010-2011年流行期には,A(H1N1)pdmとともにA(H3N2)とB型の流行がみられ,従来の季節性インフルエンザの流行パターンとなった.また,日本では従来からのオセルタミビルとザナミビルに加えて長期作用型の吸入薬であるラニナミビルと点滴静脈注射薬であるペラミビルが加わり,4種のNAIが治療に使用可能となっている.本特集では,インフルエンザを診断し,抗インフルエンザ薬で治療する時代となった現時点でのインフルエンザの診断,治療,病態,ワクチンについて,第一線で活躍されている方々から解説をいただき,さらにインフルエンザに関する最新情報や,その他の治療に関する情報を提供していただいている.本特集がこれからの日本におけるインフルエンザ診療に携わる多くの医療関係者にとって有用な情報を提供できることを心より願っている.さらに進化した日本のインフルエンザ診療が世界のインフルエンザ診療の進歩に貢献できることを期待している.エディトリアル