カレントテラピー 32-1 サンプル

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52 Current Therapy 2014 Vol.32 No.152に特有なアミノ酸(ヒト型アミノ酸)をもつ鳥由来ウイルスは,低温条件下でも効率良く増殖できる4).Ⅲ 中国で発生したH7N9ウイルスのヒトへの感染1 発生状況および疫学的特徴2013年4月1日,WHOは,中国においてH7N9ウイルスの感染者が3名発生したと発表した.感染者の数は日を追うごとに増えていき,2013年10月5日現在のWHOの発表によると感染者数は137人にものぼっている.また重症化する症例も多く,45名の犠牲者を出している(図1).感染患者の臨床症状は,軽症なものから全身症状を伴う重度の肺炎までさまざまであり,半数以上のケースで急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の合併が認められた5).今回のH7N9ウイルス感染症の疫学的な特徴としては,感染者の平均年齢は62歳(n=130)であり,71%の感染者が男性であった.また,45%の感染者が少なくともひとつの既往症を有していた6).感染源や感染経路はいまだに不明だが,75%の患者が,鳥(ニワトリ,アヒル,ハトなど)との接触歴があることから,鳥から人に伝播した可能性が高いと考えられている6),7).中国政府が早い段階で,生鳥市場の閉鎖,鶏などの焼却処分,市場の清掃・消毒などの措置をとったため,4月の下旬頃には,感染症例の報告頻度は激減した.だが,感染源や感染経路が制御されているわけではないため,完全にウイルスが駆逐されたわけではない.現に,7月以降,H7N9ウイルスの感染症例の報告は途絶えていたが,10月に入り,新たな感染者が報告された.インフルエンザシーズンの到来に伴い,H7N9ウイルスの感染が拡大していくことが懸念されている.2 H7N9ウイルスの遺伝的特徴中国の患者から分離されたH7N9ウイルスの系統樹解析の結果から,本ウイルスの内部蛋白質をコードするセグメントは,2種類のH9N2鳥インフルエンザウイルスに由来することがわかった.また,HAセグメントとNAセグメントは,それぞれH7N3鳥インフルエンザウイルス,ならびに,H2N9やH11N9亜型の鳥インフルエンザウイルス由来であると考えられ,少なくとも4種類の異なる鳥インフルエンザウイルスの遺伝子交雑体であることがわかった(図3)8)~10).さらに,遺伝子解析の結果から,大部分のH7N9ウイルスのHA蛋白質がヒト型レセプターを認識するアミノ酸変異をもつこと,およびヒト由来のH7N9ウイルスのPB2蛋白質の627番目のアミノ酸はヒト型であることが明らかとなった8).Ⅳ 中国でヒトから分離されたH7N9ウイルスの性状解析1 各種モデルにおけるH7N9ウイルスの増殖性と病原性上記の遺伝子解析から,今回中国でヒトから分離HANPNAMNSPB2PB1PAH7N9ウイルス野生のカモH7N3PB2PB1PAHANPNAMNSHAPB2PB1PAHANPNAMNSNAPB2PB1PAHANPNAMNSニワトリのH9N2NSニワトリのH9N2 PB2PB1PAHANPNAMNSPB2,PB1,PA,NP,M野鳥のH2N9野鳥のH11N9図3 H7N9ウイルスは少なくとも4種類の異なる鳥インフルエンザウイルスの遺伝子交雑体である系統樹解析の結果から,中国の患者から分離されたH7N9ウイルスは,①ウイルスの内部蛋白質をコードするセグメントは,2種類のH9N2鳥インフルエンザウイルスに由来すること,②HAセグメントはH7N3鳥インフルエンザウイルスに由来すること,③NAセグメントはH2N9やH11N9亜型の鳥インフルエンザウイルスに由来することがわかっている.