カレントテラピー 32-1 サンプル

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Current Therapy 2014 Vol.32 No.1 5151トへの伝播はみられていない.しかし,万が一,これらのウイルスがヒトに適応し,ヒトへの感染やヒト-ヒト間での伝播が効率良く起こるようになれば,鳥インフルエンザウイルスによるパンデミックが引き起こされ,世界は深刻な状況に陥るだろう.本稿では,中国でヒトに感染したH7N9ウイルスの性状解析から得られた知見について概説する.Ⅱ インフルエンザウイルスの多様性と宿主特異性1 多様なA型インフルエンザウイルスインフルエンザウイルスにはA,B,Cの3つの型があり,H5N1ウイルスやH7N9ウイルスといった鳥インフルエンザウイルスは,A型インフルエンザウイルスに属する.A型インフルエンザウイルスは,非常に広い宿主域をもつ人獣共通感染症であり,ヒトや家禽だけでなく,ウマ,ブタ,イヌ,アザラシ,クジラなどにも感染する(図2)1).A型インフルエンザウイルスの表面にはヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という2種類の表面糖蛋白質があり,抗原性の違いから,18種類のHAと11種類のNAの亜型に分類されている1)~3).インフルエンザウイルスの自然宿主である水禽からは,ほとんどすべてのHAとNA亜型のウイルスが分離されている1).水禽において,インフルエンザウイルスは経口感染し,腸管内で増殖する.水禽の糞便中には腸管内で増殖したウイルスが含まれており,排泄によって湖沼に放出されたウイルスが他の個体へと伝播する.このように,水禽類は,多様なインフルエンザウイルスを保有している.2 A型インフルエンザウイルスの宿主特異性水禽が保有しているインフルエンザウイルスが,自然宿主でない他の動物へと伝播することはめったにない.なぜなら,A型インフルエンザウイルスには,「宿主特異性」があるからである.宿主特異性を決めるひとつの鍵が,ウイルスの「レセプター特異性」である.インフルエンザウイルスの感染は,ウイルス表面に存在するHAが,宿主細胞表面に発現するレセプターに結合することによって始まる.このとき,ヒトならびに鳥インフルエンザウイルスは,それぞれ,ヒト型ならびに鳥型レセプターと称される異なるレセプターを認識する.鳥インフルエンザウイルスが増殖する水禽の腸管上皮細胞の細胞表面には鳥型レセプターが豊富に存在する.それに対して,ヒトインフルエンザウイルスが効率良く増殖するヒトの上気道(鼻腔や喉)の上皮細胞表面にはヒト型レセプターが多く存在する.このように,ウイルスのレセプター認識の違いは,それぞれの宿主動物の粘膜上皮細胞上のレセプター型に対応した特性であり,それが,鳥インフルエンザウイルスが容易にヒトに感染しない理由のひとつと考えられている.また,ウイルスの温度感受性の違いも,鳥インフルエンザウイルスが鳥類以外の宿主への感染を阻む障壁となっている.鳥由来ウイルスの増殖場所である鳥の腸管の温度は41℃であり,ヒト由来ウイルスの増殖場所であるヒトの上気道(鼻腔や喉)の温度は33℃である.そのため,鳥由来ウイルスの増殖効率は高温条件下(41℃)では高いが,低温条件下(33℃)では低い4).この特性も,鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染しづらい一因であると考えられている.最近の研究から,ウイルスポリメラーゼ蛋白質であるPB2の627番目のアミノ酸が,ウイルスの温度感受性に重要な役割を果たしていることがわかった4).したがって,PB2の627番目に,ヒト由来ウイルス図2 A型インフルエンザウイルスの宿主域A型インフルエンザウイルスは自然界に広く分布しており,さまざまな種類の動物から分離される.〔参考文献1)より引用〕