カレントテラピー 31-5 サンプル

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86 Current Therapy 2013 Vol.31 No.5540気腫合併肺線維症(CPFE)埼玉医科大学呼吸器内科教授 金澤 實1 概念気腫合併肺線維症(combined pulmonaryfibrosis and emphysema:CPFE)はCTにおいて,上肺野の気腫と下肺野の線維化を認める臨床症候群として2005年にCottinらによって提唱された.加齢と喫煙とが気腫と線維化の共通した原因として推定されている.臨床像として,スパイロメトリーはおおむね正常であるが,肺拡散能力とガス交換障害は著しく低下し,しばしば肺高血圧症を合併するとされている.CPFEは臨床現場で数多く観察されるものの,気腫と線維化病変の混在はそれぞれが連続的に発現するため,本疾患が独立した疾患とは考えにくい面もある.近年,45歳以上の喫煙者(2,416例)において,約半数は慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonarydisease:COPD)に該当し,8%にCTで有意な間質性陰影を認めると報告された.COPDの診断では,線維化の合併のため気流閉塞が検出されにくく,診断の遅れにつながる.2 病理学的背景喫煙に起因する気腫病変としては,小葉中心性肺気腫と傍隔壁型肺気腫が挙げられる.また,気道病変として呼吸細気管支炎と細気管支周囲の線維化がみられる.一方,喫煙に起因する線維化性疾患として,肺ランゲルハンス細胞組織球症,呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患や剥離性間質性肺炎が挙げられ,特発性肺線維症(idiopatic pulmonary fibrosis:IPF)においても喫煙は最大の危険因子とされている.河端らは,胸膜から少し離れて存在する壁の薄いのう胞を伴う網状病変を,“気腔拡大を伴う線維化”と提唱した.その特徴は,肺構造の改変を伴う硝子化の目立つ間質線維化病変で,気腫性変化を伴い,細気管支中心性の分布を示し,線維芽細胞巣がないことである.また,Katzensteinらは同様の特徴を有する病変を喫煙関連間質性線維化と名づけ,近傍にはいずれも小葉中心性肺気腫や呼吸細気管支炎の所見を伴うことから喫煙に起因するとしている.3 臨床的特徴CPFEの合併症で,感染症としては気道感染による増悪や細菌性肺炎がみられるが,拡張した気腔への肺アスペルギルス症も少なくない.肺癌の合併は,COPD単独もしくは気腫を伴わない間質性肺炎に比べ頻度が高い.線維化病変のため画像発見が遅れるだけでなく,低肺機能のための手術の制限,放射線治療や抗がん剤治療に伴う増悪のリスクが高く,治療には大きな制約となっている.またスパイロメトリーは正常なことが多いため,病変が進んで初めて診断を受ける例も少なくない.さらに,体動時の低酸素血症と肺高血圧症の合併がしばしばみられ,在宅酸素療法の適応となる例も多い.COPD―その病態と最新治療