カレントテラピー 31-5 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.5 83治療薬解説537TORCH試験や最近のメタ解析8)などの報告でもLABA単剤治療による死亡率上昇はないとされる.ただし,COPDと喘息のオーバーラップが疑われる症例では,吸入ステロイド薬の併用が必須である.Ⅲ LAMA気道は交感神経,副交感神経の自律神経支配を受けている.抗コリン薬は迷走神経終末から放出され,気道平滑筋に作用するアセチルコリンに対し拮抗的に作用し,気管支拡張作用をもたらす.アセチルコリンの受容体であるムスカリン受容体はM1~M5まで,少なくとも5つのサブタイプが確認されているが,肺にはM1~M3までの3つが存在する.M1受容体は迷走神経節,M2受容体は節後神経線維の末端,M3受容体は気道平滑筋などに分布する(図1)9).M1とM3受容体刺激は気道を収縮させ,M2受容体刺激は気道を拡張させるため,COPDに対する抗コリン薬としてはM2受容体作用に拮抗せず,M3受容体に選択性の高い薬剤が望ましいと考えられている.本邦で用いられるLAMAとしてチオトロピウム(スピリーバR)があるが,2012年には本邦で新たにグリコピロニウム(シーブリR)が発売された.表2 10),11)にそれぞれの特徴をまとめる.さらにacridiniumが現在臨床試験中である.1 チオトロピウムはじめて臨床応用された長時間作用型抗コリン薬であり,1日1回の吸入で作用が24時間持続する.ハンディヘラー?とレスピマット?の2剤形がある.UPLIFT試験12)で肺機能やQOLの改善,増悪リスクを減少させること,POET試験13)でサルメテロールを上回る増悪リスク抑制効果を示したことから,現在わが国のガイドラインでCOPD患者における第一選択薬となっている.ハンディヘラー?とレスピマット?の臨床効果を比較した報告はいくつか存在するが,いずれの報告でも両者は同等の効果を有するとされている14).どちらを選択してもよいが,レスピマット?は吸入操作の簡便さや,より低い吸気流速でも高い肺沈着率を達成できる点が優れている.2 グリコピロニウム2012年の本薬剤の登場により,長らくチオトロピウムのみであったLAMAの選択肢が増えた.グリコピロニウムはドライパウダー製剤で,ブリーズヘラーを用いて吸入する.グリコピロニウムはチオトロピウムと比べ作用発現が3~4.8倍速く,最大効果発現までの時間は約1時間速い.またM3受容体への選択性も高く,LAMAとして望ましい性質を有している.LABAであるインダカテロールと同じ吸入デバイスを用い,かつどちらも1日1回吸入型の薬剤であるため,これら2薬剤の合剤(QVA149)が現在臨床開発中である.グリコピロニウムの臨床効果は,GLOW115),GLOW216),GLOW3試験17)でそれぞれ示されている.それらにおいて,肺機能・自覚症状・運動耐容能の改善,増悪リスクの抑制が確認されており,大きな副作用も認めなかった.チオトロピウムと同等の短副交感神経節迷走神経節前ニューロンAchAchM1M2M3阻害阻害LAMA節後ニューロンLABA刺激平滑筋細胞β2図1 気道の自律神経支配気道は交感神経,副交感神経の自律神経支配を受けている.LABAは交感神経β2受容体を介して,LAMAは副交感神経M3受容体を介して気管支拡張効果を示す.〔参考文献9)より引用改変〕