カレントテラピー 31-5 サンプル

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40 Current Therapy 2013 Vol.31 No.5494Ⅰ はじめに慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonarydisease:COPD)は有害なガスや粒子により亢進した慢性炎症反応に関連した,持続性の気流閉塞を特徴とする通常は進行性の疾患とされる.『GlobalStrategy for the Diagnosis, Management and Preventionof COPD(GOLD)2011』では「予防・治療可能な疾患」であることが明記されており,増悪および併存症が個々の患者の全般的な重症度に影響を及ぼすことも述べられている1).日本呼吸器学会より刊行された『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第3版』では,COPDの管理目標を①症状および運動耐容能の改善,②生活の質(QOL)の改善,③増悪の予防と治療,④疾患の進行抑制,⑤全身併存症および肺合併症の予防と治療,⑥生命予後の改善,と定めている.また,管理計画として①病態の評価と経過観察,②危険因子の回避法,③安定期の管理法,④増悪期の管理法に大別し,禁煙治療,ワクチン接種,薬物療法,呼吸リハビリテーション(運動療法,栄養療法,患者教育),酸素療法,換気補助療法,外科療法などを包括的に実施することが必要であると述べられている.安定期COPDの管理においては肺機能だけではなく呼吸困難,運動能力の低下,繰り返す増悪といった症状の程度を考慮した治療選択を提示している( 図1)2). また,GOLD 2011ではGOLD 2006と異なり,診断に用いられる呼吸機能だけではなく,さらに管理評価の指標として増悪リスクと症状・健康状態を併せて用いることを提示している(図2)1).つまり,COPDの治療に際しては呼吸機能の改善のみならず,症状改善,リスク低減の視点が重要であることを示している.本稿では薬治療総論室 繁郎*1・谷村和哉*2慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の管理目標は①症状および運動耐容能の改善,②生活の質(QOL)の改善,③増悪の予防と治療,④疾患の進行抑制,⑤全身併存症および肺合併症の予防と治療,⑥生命予後の改善,と定められており,つまりは呼吸機能の改善のみならず症状改善,リスク低減の視点に集約される.長時間作用型吸入気管支拡張薬を中心としたCOPD安定期の薬物治療における現在のコンセプトは「“症状を軽減する薬剤”と“増悪を抑制する薬剤”の選択」である.同時に,予後に大きな影響を与える可能性がある併存症の診断と治療が不可欠である.また,頻回増悪をきたす発現型を示す患者群の存在,COPDにおける炎症機構の解明などから,将来的には個々の患者に合わせた治療や炎症病態特異的な治療の展開,さらに再生医療の展開が期待される.*1 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学講師*2 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学COPD―その病態と最新治療