カレントテラピー 31-3サンプル

カレントテラピー 31-3サンプル page 14/30

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Ⅲ抗血小板薬抗血小板薬を作用メカニズムに基づいて分類すると,1シクロオキシゲナーゼ1(COX -1阻害薬),2アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬,3ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬,4プロスタグランジン製剤....

Ⅲ抗血小板薬抗血小板薬を作用メカニズムに基づいて分類すると,1シクロオキシゲナーゼ1(COX -1阻害薬),2アデノシン二リン酸(ADP)受容体拮抗薬,3ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬,4プロスタグランジン製剤,4セロトニン受容体拮抗薬,などに分けることができる.冠動脈疾患の有病率,発症率の高い欧米では特に循環器分野での抗血小板療法が注目を集めている.特に古くからあるアスピリンについては,Second International Study ofInfarct Survival(ISIS -2)をはじめとした多数のランダム化比較試験がなされ,心血管イベント発症の二次予防効果が示された1).その後,急性期の冠動脈疾患の多くが経皮的冠動脈インターベンション治療を受けるようになり,ステント血栓症予防として,アスピリンとチエノピリジン系薬物の併用療法が世界的に確立された.実際,クロピドグレルとアスピリンの併用療法とアスピリン単独療法を比較したCURE試験では,心血管死亡率において差異は認めなかったものの,心血管死亡/非致死的心筋梗塞/脳卒中という複合エンドポイントはクロピドグレル併用群において有意に少なかった2).クロピドグレルは薬効メカニズムの理解より過去の経験の蓄積によって使用が拡大した薬剤である.実際,クロピドグレルの薬効標的であるP2Y12ADP受容体がクローニングされる2001年まで,クロピドグレルは薬効が未知のまま使用されてきた.近年,一部の研究者はクロピドグレルがプロドラッグであり,肝臓の酵素の特性により薬効にばらつきがあると主張している.実際,標準量投与時のP2Y12受容体阻害率は30~50%であり,ばらつきは大きいとも少ないとも主張できる.VerifyNowのような血小板機能検査によりクロピドグレルの薬効を調節しても心血管イベント発症予防の効率を向上させることはできない.慢性期の冠動脈疾患に対して,内科治療,冠動脈バイパス治療に比較して,カテーテル治療により予後を改善するとの臨床エビデンスは少ない.労作性狭心症の症状を取るとの視点では,金属ステント(bare -metal stent:BMS)には再狭窄して症状が増悪する症例が少数にみられた.これらの症例に対しては,ステントに細胞増殖阻害物質を塗布した薬剤溶出性ステント(drug eluting stent:DES)が使用される.DESの出現により,再狭窄率は劇的に低減した.しかし,長期予後の改善を示すことはできず,また内膜の新生の遅延のためステント血栓症の発症時期が遅延しているといわれている3).実際にDES植込み後1年以上経てから発生する超遅発性ステント血栓症(very late stent thrombosis:VLST)がBMSと比較して高いことが報告され,現在でもDESの最大の懸念材料として挙げられている.実際にVLSTが問題であるという循環器内科医はDESを使用すべきではない.DESの遅発性血栓症対策として,クロピドグレルの長期使用を推奨する時期もあったが,医療費を増やす「マッチポンプ」を組み入れられるほどの余力は,高齢化,医療費の高騰という共通の課題を抱えるどこの国にもないだろう.Ⅳ抗凝固薬抗凝固薬として最も古い薬はヘパリンである.ヘパリンは内在性の抗凝固因子であるアンチトロンビンⅢ(ATⅢ)に結合し,ATⅢの機能を亢進させることにより抗凝固効果を発揮する.ヘパリンは分子量の異なる多くの物質の混合物であった.低分子成分のみを製剤化すると吸収,代謝が均一になり,また抗Xa効果が強くなった.さらに,抗Xa成分を有する5単糖が合成製剤として開発された.これらの薬剤は未分画へパリンよりも標準的な投与が可能である.出血リスクも標準化するため,血栓リスクが高く出血リスクの低い患者集団を選択することが重要となった.経口抗凝固薬としてはワルファリンが50年以上もの間,唯一の選択肢であった.ワルファリンはビタミンK還元酵素阻害薬である(図).ビタミンKの酸化の過程では,凝固因子の第Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,X因子,Current Therapy 2013 Vol.31 No.329153