カレントテラピー 31-10 サンプル

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8 Current Therapy 2013 Vol.31 No.101005Ⅰ はじめにわが国の全般的な食塩摂取量は,戦後60年余りの期間を経て減少しているものの,依然として欧米諸国に比べれば高値であり,このことがわが国の疾病構造や医療費にも強く影響していることが指摘されている.望ましい摂取レベルに近づけるためには,今後も種々の継続的な取り組みが必要であるが,このためには食塩摂取量の現状と推移を整理して理解しておくことが望まれる.本稿においては,これまでに報告されている食塩摂取量に関する研究データや国民健康・栄養調査の成績を中心に概説する.Ⅱ わが国における食塩摂取の現状厚生労働省が公表した『平成23年国民健康・栄養調査報告』1)によると,20歳以上の成人1人1日当たりの食塩摂取量は,男性11.4g,女性9.6gとなっており,この5年間でも男女各々0.8g,0.9gの減少が認められている(図1).また,性・年齢階級別にみてみると,いずれの年齢階級においても男性の摂取量が女性を上回ることや,男女とも年齢階級が上がるにしたがって摂取量が増加する(70歳以上を除く)傾向(図2)については,ここ数年変化は認められない.一方,『日本人の食事摂取基準(2010年版)』2)に示されている目標量(生活習慣病の一次予防を目的とした当面目標とすべき量)である男性9g未満,わが国における食塩摂取量の現状と推移由田克士*わが国の食塩摂取量は減少傾向にあるものの,いまだ欧米諸国よりも高いレベルにある.食塩の摂取量は性・年齢階級によって異なる傾向があり,女性よりも男性,若年者よりも高齢者において,高値を示す傾向がある.食塩の摂取は食塩そのものよりも,しょうゆや味噌などの,目には見えない食塩が多く含まれている調味料や加工食品に由来する量がはるかに多い.また,食塩の摂取量には地域による差異も認められており,全般的には東日本で高く,逆に西日本では低い傾向があり,これは以前より継続している.しかし,東西の差はしだいに小さくなってきている.調理に用いる調味料の使用方法や加工食品などに含まれる食塩量の低下などによって,一定の減塩が達成された状況から,今後さらなる摂取レベルの低下を目指すためには,従来にない新たな取り組みや仕組みを立ち上げる必要がある.また,減塩に対するよくないイメージを払拭できるような戦略を含む社会全体を巻き込んだ取り組みを立ち上げることも望まれる.* 大阪市立大学大学院生活科学研究科食・健康科学講座公衆栄養学教授減塩運動の効果と今後の展望