カレントテラピー 31-10 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.10 71004減塩運動の効果と今後の展望企画独立行政法人国立病院機構九州医療センター高血圧内科科長土橋卓也食塩摂取量が依然として多いわが国は,減塩後進国といわざるを得ない.平成23年の国民健康・栄養調査による食塩摂取量は男性が11.4g/日,女性が9.6g/日であり,厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2010年版)」で提唱された男性9g未満,女性7.5g未満の達成率は各々30%程度にとどまっている.高血圧は日本に4,000万人以上いると推定されているもっとも多い生活習慣病であるが,血圧管理状況は必ずしも良好でないことが報告されており,食塩摂取量が多いことも血圧管理が不十分である一因と考えられる.特に日本人は食塩の過剰摂取によって血圧が上昇しやすい,すなわち食塩感受性が高い民族であることが知られており,血圧管理と予後の改善を目的とした減塩指導の意義は大きい.国民健康・栄養調査では,多くの国民が減塩の意識をもっていることが示されているが,自覚的減塩の意識が必ずしも実際の減塩に結びついていないのが問題である.減塩の意識と実践が乖離する要因として,摂取している食品に含まれる食塩量がわかりにくいという成分表示の問題,個人の食塩摂取量の正確な評価が難しいことなどが挙げられる.このような現状を踏まえて日本高血圧学会および日本高血圧協会では多面的アプローチにより国民レベルでの食塩摂取量の低下を目指した活動を行っている.本特集号では,一般住民や集団を対象としたpopulation approach,行政や食品産業界などへの働きかけを行うpolitical andsocial approach,食塩摂取量の評価に基づいて高血圧患者や健診受診者など個人に減塩指導を行うindividual approachなど異なった視点からのアプローチについてそれぞれの専門家に解説いただくとともに,地域に根ざした減塩啓発活動や減塩レシピ作成の取り組みについても紹介していただいた.最近の健康志向の高まりを受けて減塩食品も多く登場しており,町おこし的な減塩運動も広がりをみせている.さらに,食育の観点に基づいた小児に対する減塩教育,特に栄養士や教育従事者,行政など多職種協働によるアプローチなども試みられており,これらの活動が減塩後進国からの脱却へのステップとなることが期待される.本特集が,高血圧診療にかかわる医師やコメディカルはもとより,健康増進に携わるすべての医療関係者にとって,今日から役立つ書となることを心より願っている.エディトリアル