カレントテラピー 31-10 サンプル

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Current Therapy 2013 Vol.31 No.10 211018常血圧者の両方で認められているため,集団全体が減塩できた場合,集団全体の血圧分布は全体に低いほうにシフトし,また血圧の平均値は低下,集団の高血圧有病率も低下する.本稿では,本邦における減塩のポピュレーション・アプローチの歴史および日本高血圧学会によるポピュレーション・アプローチについて紹介する.Ⅱ 本邦における減塩のポピュレーション・アプローチの歴史1960年代,日本は年齢調整脳卒中死亡率が世界で最も高い国のひとつであったが,その後の約25年間で死亡率は激減した.その要因として高血圧の薬物治療が普及したことが考えられるが,降圧剤を服用していない若年者の平均血圧の低下もみられたことから,薬物治療以外の要因,すなわち国民の生活習慣の変化が降圧要因のひとつであることが予想される2).しかしこの間の生活習慣の変化として,運動量の低下,肥満者および飲酒量の増加など,血圧が上昇方向に働く変化が多くみられる2).一方,国民全体の減塩運動による食塩摂取量の大幅な減少が国民の血圧低下に働く生活習慣の変化として挙げられる.1950年当時,24時間蓄尿により確認された東北地方の食塩摂取量は25g近くもあったことが報告されているが3),国民栄養調査で報告された1975年の食塩摂取量は全国平均値で約14g,さらに最近の国民健康・栄養調査では約11gと大幅に減少しており4),減塩は国民全体の平均血圧値の低下に大きく寄与していると考えられる.まさに集団全体が減塩したことにより,集団全体の血圧値の分布が低いほうへシフトしたポピュレーション・アプローチの例となろう.また2012年に策定された健康日本21(第2次)5)では,食塩摂取量の目標が8gと設定されたため,引き続き減塩活動の活発化が必要である.Ⅲ 日本高血圧学会による減塩のポピュレーション・アプローチ減塩を含む高血圧の一次予防のためのポピュレーション・アプローチとして,表に示すような方法が提唱されている6).1つ目のマスメディアによる普及啓発は,電波や配布物を用いて一般国民に明確な情報を広く提供することである.日本高血圧学会では,減塩のポピュレーション・アプローチとして,学会のウェブページ7)を通じて,食塩の知識や食塩含有量の少ない食品の紹介などの教育資材の作成・配布および教育講演などを実施している.2つ目は食品製造業者に対して加工食品の減塩を促すことであり,加工食品中の食塩含有量表示の義務づけや,食塩含有量制限の法的措置・行政指導も必要である.食品製造業者による加工食品の減塩方法のひとつとして,加工食品中の食塩含有量表示の義務づけが挙げられる.栄養と血圧の関連を検討した国際共同研究(International collaborative study1.マスメディアによる普及啓発・ 電波や印刷物などのさまざまな媒体を用い,食塩の健康影響についての明確で単純なメッセージを広く提供2.食品製造業者による加工食品の減塩・食品製造業者による自主的な減塩推進・ 加工食品中の食塩含有量表示の義務づけ・食塩含有量制限の法的措置・行政指導3.給食・外食産業における調理の減塩・学校・職場・病院の給食の減塩促進・レストランなど外食産業の減塩促進・メニューの塩分量の表示・減塩メニューの設置4.保健・医療専門家による指導・教育・ 医師・看護師・保健師・養護教諭・栄養士・薬剤師などすべての保健・医療専門家の協力・保健・医療の現場においてすべての人を対象に減塩指導・教育現場における食育・保健教育表減塩のポピュレーション・アプローチの方法〔参考文献6)より引用改変〕