カレントテラピー 31-10 サンプル

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20 Current Therapy 2013 Vol.31 No.101017Ⅰ はじめに生活習慣病予防の戦略として,疾病発症につながりやすいハイリスク者を対象に保健指導や治療を集中的に行うハイリスク・アプローチ(high - riskapproach)と,疾病発症のリスク要因の集団全体における分布を改善するために環境要因に介入するポピュレーション・アプローチ(populationapproach)がロンドン大学のRoseにより提唱された(図1)1).ハイリスク・アプローチでは,ハイリスク者が少人数であることが多いため,疾病発症者の減少効果は限定的と考えられているが,ポピュレーション・アプローチでは集団全体に対して働きかけるため,さらに大きな疾病発症者減少が期待できる.食塩摂取量低減による降圧効果は,高血圧者,正Population Approach-日本高血圧学会による減塩啓発活動を中心にして-宮川尚子*1・三浦克之*2減塩による降圧効果は,高血圧者,正常血圧者の両方で認められているため,集団全体を対象としたポピュレーション・アプローチによる集団の血圧平均値の低下や,高血圧有病率の低下が期待できる.本邦では,1960年代の高塩分摂取から大幅な減塩を達成し,血圧平均値の低下,および脳卒中死亡率の低下を経験した.これは,本邦における減塩のポピュレーション・アプローチが大きく貢献した結果と考えられる.日本高血圧学会では減塩委員会により,マスメディアを用いた普及啓発活動や,食品製造業者への加工食品の減塩促進活動,また給食や外食産業における調理の減塩など,さまざまなツールを組み合わせたポピュレーション・アプローチを進めている.健康日本21(第2次)では集団全体の収縮期血圧の平均値が4mmHg低下すると,脳血管疾患死亡率や虚血性心疾患死亡率が5~10%低下することが試算されている.個人の努力による減塩が困難になりつつある現代の日本において,減塩のポピュレーション・アプローチの重要性は高まっている.*1 滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門*2 滋賀医科大学社会医学講座公衆衛生学部門教授減塩運動の効果と今後の展望低い危険因子レベルによる発症危険度高い平均値が低いほうにシフトするポピュレーション・アプローチ(集団全体への働きかけ)図1 ポピュレーション・アプローチ〔参考文献1)より引用改変〕