カレントテラピー 30-7 サンプル

カレントテラピー 30-7 サンプル page 5/30

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糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望糖尿病の治療と血糖降下薬療法―総論*1*2高本偉碩・門脇孝糖尿病はインスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし,種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である.良好な血....

糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望糖尿病の治療と血糖降下薬療法―総論*1*2高本偉碩・門脇孝糖尿病はインスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし,種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である.良好な血糖管理の維持と糖尿病合併症の発症・進展の阻止により,非糖尿病者と同等の生活の質(QOL)と健康寿命を確保することが,糖尿病における治療の長期的目標である.HbA1c(NGSP)6.9%以上〔HbA1c(JDS)6.5%以上〕が続く場合は積極的に治療を行い,必要に応じて糖尿病専門医への紹介を検討すべきと考える.現在使用可能な血糖降下薬は,注射薬(インスリン製剤,GLP-1受容体作動薬)と経口薬とに大別される.経口薬は,作用機序からビグアナイド薬,チアゾリジン薬,スルホニル尿素薬,速効型インスリン分泌促進薬,DPP-4阻害薬,α-グルコシダーゼ阻害薬の6種類に分類される.近年,糖尿病の治療においては,単に良好な血糖管理だけでなく発症初期からの介入,血圧・脂質を含めた包括的な治療,低血糖や体重増加の回避も重要であると認識されている.すなわち,一律にどこまで血糖を下げるのかという点から,個々の症例に応じてどのようなアプローチで血糖を含めたリスクファクター全般を管理するかという点に,糖尿病の治療の眼目が置かれるようになると思われる.Ⅰはじめに糖尿病はインスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし,種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である.インスリン作用の不足は,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性の2つの要素からなる.近年わが国では糖尿病患者が増加し続けており,2007年国民健康・栄養調査によれば,糖尿病が強く疑われる人や可能性を否定できない人が合わせて2,210万人と推計されている1).また,最新の2010年国民健康・栄養調査によれば,HbA1c(NGSP)6.5%以上〔HbA1c(JDS)6.1%以上〕,または,質問票で「現在糖尿病の治療を受けている」と答えた糖尿病が強く疑われる人の割合は,男性では40歳代8.0%,50歳代15.6%,60歳代22.1%,女性では40歳代3.6%,50歳代5.6%,60歳代13.5%に上る2).糖尿病の大部分を2型糖尿病が占めている.低インスリン分泌能という日本人の遺伝的素因に,高脂肪食・運動不足・肥満といったインスリン抵抗性増大をきたす環境因子が加わって発症するものと考えられる(図1).急激かつ高度のインスリン作用不足は,血糖値の著明な上昇や高度脱水,ケトアシドーシスなどをまねき糖尿病昏睡をきたす.また,慢性的に管理不良な糖尿病は,神経障害・網膜症・腎症のいわゆる3大合併症(細小血管症)を惹起するのみならず,虚血性心疾患・脳血管障害・閉塞性動脈硬化症など,*1東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科助教*2東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授8Current Therapy 2012 Vol.30 No.7598