カレントテラピー 30-7 サンプル

カレントテラピー 30-7 サンプル page 20/30

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肥満症の頻用漢方処方堅太りタイプ実証,肩こり,胸脇苦満,便秘大柴胡湯食毒,臍を中心にお腹がビール樽状に膨満,便秘防風通聖散水太りタイプ多汗,尿の出が悪い,下肢浮腫,膝関節痛防已黄耆湯下肢がひどく重だる....

肥満症の頻用漢方処方堅太りタイプ実証,肩こり,胸脇苦満,便秘大柴胡湯食毒,臍を中心にお腹がビール樽状に膨満,便秘防風通聖散水太りタイプ多汗,尿の出が悪い,下肢浮腫,膝関節痛防已黄耆湯下肢がひどく重だるくむくむ九味檳榔湯血行不良(?血)タイプ気逆(強いのぼせ,精神不安定),月経異常,小腹急結桃核承気湯冷えのぼせ,肩こり,月経異常,臍傍の圧痛桂枝茯苓丸冷え症,夕方に足がむくむ,めまい感当帰芍薬散表3肥満に対する頻用処方2防已黄耆湯虚証の肥満の代表的方剤で,防已・黄耆・白朮・甘草・生姜・大棗の6種類の生薬からなる.色白で水太り,疲れやすく,汗が多く,膝関節の腫脹するもの,変形性膝関節症で運動不足の人などが目標とされている.われわれの経験では,網膜症や腎症のために運動療法施行困難な内臓肥満型糖尿病患者に防已黄耆湯を用いて,有意な内臓脂肪減少をみている18).Ⅴ自覚症状の改善に対する漢方治療糖尿病診療において,特に自覚症状の改善という点で漢方治療が威力を発揮するのは,前述の糖尿病性神経障害である.ストレス管理は生涯にわたる糖尿病の自己管理には欠かせないものであるが,心理的ストレスや疲労感に対しても漢方は対応が可能であり,その結果,自己管理が可能となり,血糖コントロールの改善につながることをしばしば経験する.1心理的ストレスに対して主に柴胡剤が適応となる.実証では大柴胡湯,柴胡加竜骨牡蠣湯,中間証では小柴胡湯,虚証では柴コケイシトウサイコケイシカンキョウトウ胡桂枝湯や柴胡桂枝乾姜湯を用いる.この他,神ケイシカリュウコツボレイトウ経過敏に桂枝加竜骨牡蛎湯,喉の閉塞感などを訴ハンゲコウボクトウコウえる几帳面な人に半夏厚朴湯,抑うつ的な状態に香ソサン蘇散,多彩な愁訴で心気症的ヒステリックな場合には加味逍遥散,さらに易怒的でイライラが強い時にヨクカクサンは抑肝散も頻用される.抑肝散は最近アルツハイマー型認知症の周辺症状の改善に有用であることで注目されている.2易疲労感に対して補剤が適応となる.人参湯,四君子湯,六君子湯,サイホチュウエッキトウニンジンヨウエイトウキヒ補中益気湯,十全大補湯,人参養栄湯,帰脾湯トウ,八味地黄丸,真武湯などが効果的である.これらは免疫力の増強効果もあり,補中益気湯では末期の寝たきりの糖尿病患者でMRSA感染の改善や難治性感染性褥瘡の改善をみることもしばしば経験する.Ⅵおわりに近年,人参湯がNon -obese diabetic(NOD)マウスで,IL -4の産生抑制を介して膵島の破壊を阻マオウトウ止し,糖尿病の発症を予防すること19),また麻黄湯でSTZ投与により破壊された膵島の再生がなされたとの報告がみられる20).漢方薬を服用することによって糖尿病の発症そのものを抑えられる可能性もある.『黄帝内経素門』に「聖人は未病を治す」とあるが,糖尿病も初期の状態は,まさにメタボリックシンドロームのなかでの「未病」と考えられる.血糖値は次々と開発される西洋薬によってよりよいコントロールを得やすくなっているが,食事・運動療法という患者自身の不断の努力が不可欠であり,そこに患者の信念や感情などが深く関与する.漢方治療は,病気を治すのではなく,病人を治す患者中心のまさにオーダーメイド医療である.生涯にわたる糖尿病治療において,漢方の役割を十分理解し,上手く取り入れて,西洋医学と融合し,最良の医療を心掛けたいものである.112 Current Therapy 2012 Vol.30 No.7702