カレントテラピー 30-7 サンプル

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糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望糖尿病の漢方治療*1*2*3吉田麻美・大澤仲昭・花房俊昭漢方医学は,先人の経験に基づいて病人をグローバルにとらえる,心身一如のアプローチであり,西洋医学が苦手とする....

糖尿病の薬物療法―最新の治療と将来展望糖尿病の漢方治療*1*2*3吉田麻美・大澤仲昭・花房俊昭漢方医学は,先人の経験に基づいて病人をグローバルにとらえる,心身一如のアプローチであり,西洋医学が苦手とする生体機能の異常による症候に対しても対応が可能で,エビデンスも十分ではないものの集積されつつある.糖尿病の治療において,血糖コントロールに対しては西洋医学的に徹底的に対応しつつ,漢方の役割は,自覚症状の改善や合併症の治療の補助にある.特に末ゴシャジンキガンシャクヤクカンゾウトウ梢神経障害に対する牛車腎気丸,こむらかえりに芍薬甘草湯,消化管運動神経機能低下症状に対リックンシトウダイケンチュウトウボウフウツウショウサンボウイオウギトウして六君子湯や大建中湯,また肥満の改善に防風通聖散や防巳黄耆湯などが有用である.生涯続けなければならない糖尿病の治療のなかで,西洋医学による疾患治療を基本の軸として,不十分な場合は,必要に応じて,随証治療という独自の治療戦略をもつ漢方医学も取り入れることで,最良の糖尿病治療を目指したいものである.Ⅰはじめに糖尿病の治療の目標は,高血糖症状を除き,合併症の発症と増悪を阻止し,糖尿病患者が健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)を維持し,寿命を確保することである.最近のUKPDS,ACCORD,ADVANCE,VADTなどの研究結果から,早期からの,食後血糖も含めた血糖コントロールとその維持が,合併症の発症進展の抑制,そして寿命の確保につながることが明白となった.漢方治療に際し,われわれはどのような疾患に対しても,まず西洋医学的に対応したうえで,必要な場合に漢方治療を行う重要性を強調しているが,特に糖尿病は,病因,病態ともに多様であり,個々の患者の臨床像を西洋医学的に十分解析し,最新のエビデンスに従ってきめ細かに対応することが必要で養生(生活習慣の是正)西洋医学的治療血糖コントロール合併症の治療漢方医学的治療自覚症状の改善図糖尿病の治療ある.血糖コントロールについては,西洋医学的に徹底的に対応したうえで,漢方治療の役割は合併症の進展阻止,および自覚症状の改善によってQOLを高めることと考える(図).Ⅱ漢方医学における糖尿病漢方医学では「糖尿病」という病名は記載されて*1藍野病院内科副部長*2藍野加齢医学研究所所長*3大阪医科大学内科学Ⅰ教授108 Current Therapy 2012 Vol.30 No.7698