カレントテラピー 30-4サンプル

カレントテラピー 30-4サンプル page 8/28

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アルツハイマー病の病態と根本治療順序はいまだ十分に明らかになっていないという問題もある.バイオマーカーについての大規模前向き研究であるADNIのデータにより,これらの問題が解決され,より詳細に病期を区別で....

アルツハイマー病の病態と根本治療順序はいまだ十分に明らかになっていないという問題もある.バイオマーカーについての大規模前向き研究であるADNIのデータにより,これらの問題が解決され,より詳細に病期を区別できるようになると思われる.Ⅲアルツハイマー病による軽度認知障害(MCI due to AD)1990年代に入りMCIは認知症の前段階として「正常ではない,認知症ではない,その中間の状態」段階を指す症候群として定義された.そのなかでもAD病理を想定した,記憶障害が主体のMCIを健忘型MCIと分類してきた.1999年にPetersenらが提唱したMCIの診断基準が,後に健忘型MCIの診断基準として用いられてきた7).新診断基準では,より明確にAD病理が根底にあると考えられるものをMCIdue to ADとして定義し,臨床診断基準(表2-A)とバイオマーカーを取り入れた研究基準(表2-B)に分けて基準を設定した8).まず,表2-A-1にMCIの臨床症候群としての定義を示した.重要なことは,他人との比較ではなく個人のなかでの認知機能低下であるということである.また,臨床的なMCI due to ADは表2-A-3に示したように,AD dementiaの特徴を有するものとして定義される.記憶障害を主症状とするMCIの多くは進行してAD dementiaになるが,MCI due to ADの項目として記憶障害があることは要求していない.これはvisual variantやlanguage variantといった非典型的なADの前段階を除外しないためである.表2-Bに示したバイオマーカーを取り入れた研究基準は,病因がはっきりし治療につなげることができることや,進行の可能性がわかるという利点がある.前述したようにバイオマーカーはAβ沈着を反映するものと,神経変性を反映するものに分けられる.Aβ沈着を反映するバイオマーカーとしては髄液Aβ42,amyloid PET,神経変性を反映するバイオマーカーとしては髄液タウ・リン酸化タウ,海馬あるいは内側側頭葉の萎縮の定量,脳萎縮率の定量や,FDG -PET,SPECTが挙げられる.この2者の陽性/陰性の組み合わせによってADによる可能性が高いかどうかが定められている.すなわち,両方陽性のものはAD病理が根底にある可能性が高く,片方だけ検査し陽性のものは可能性が中程度で,両方陰性のものは可能性が低い.バイオマーカーを診断基準に取り入れることで起こる問題点はⅡ項でも述べたが,より繊細な変化が検出されるMCIの段階では,真に前向きのバイオマーカー研究が不足しているため,バイオマーカーによっては短期的な予後を反映するもの,あるいは長期的な予後を反映するものがあると推測されるが,その情報がまだ乏しいことも課題である.また,現時点ではAD病理変化の過程で変動が示されているサイトカインなどの炎症性バイオマーカー,酸化ストレスマーカー,シナプス障害のマーカーといった項目についてはその有用性がいまだ定まっていないため診断基準には含まれていないが,より早期の変化を検出できる可能性もあり,さらなる研究が待たれる.Ⅳ発症前段階のアルツハイマー病(preclinical AD)バイオマーカー研究から,正常高齢者においてもMCIやAD dementia患者にみられるようなAβ蓄積を示唆する所見がみられること,またコホート研究からMCIの診断基準を満たす何年も前からごく軽微な認知機能変化がみられ,それはADへの進行の予測因子となることが明らかになってきた.このようにADの病態は,AD dementiaの診断の何年も前から始まっていると考えられている.Aβ修飾薬のトランスジェニックマウスを用いた研究や認知症を対象とした臨床治験から,より早期に治療を開始しないと効果がみられないことが示唆されており,ADの発症前段階は早期治療介入を考えた場合に非常に重要な時期である.しかしながら,ADの病態変化を呈する高齢者でも生涯を通じて症状が出ないことがあり,Aβ蓄積,シナプス機能不全,神経原線維変化,神経細胞死といったADの病理カスケードと臨床症状の出現の関係にはいまだ不明な点が多い.Current Therapy 2012 Vol.30 No.429511