カレントテラピー 30-4サンプル

カレントテラピー 30-4サンプル page 13/28

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ease:AD),パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD),ハンチントン病(Huntington’s disease),筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateralscrelosis:ALS)といった他の神経変性疾患においても,プリオン病と....

ease:AD),パーキンソン病(Parkinson’s disease:PD),ハンチントン病(Huntington’s disease),筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateralscrelosis:ALS)といった他の神経変性疾患においても,プリオン病と同様にある特定のタンパクの構造異常あるいはフォールディング異常によって,タンパクがミスフォールディング,すなわち立体構造(コンフォメーション)を変化させて凝集することで疾患が引き起こされると考えられている(proteinconformational disorders)8).さらに,これらの神経変性疾患も,プリオン病と同様に原因となる異常タンパクの伝播が個体間で可能であるという実験的報告が増加してきている9)?11).本稿では,これらの神経変性疾患のなかでも,特にADに関連するアミロイドβタンパク(amyloidβprotein:Aβ)の脳への沈着が個体間や個体内で伝播することについてこれまでの報告を概説する.Ⅱ遺伝子改変モデルマウスを用いた脳βアミロイドーシスの個体間伝播の試みADは最も頻度の高い神経変性疾患で,その神経病理学的な特徴のひとつがAβの脳への沈着である.Aβあるいはその凝集体に神経毒性があることや,家族性ADの原因遺伝子としてAβの前駆体タンパク(amyloid precursor protein:APP)やAPPからのAβの切り出しにかかわるγセクレターゼの活性部位を構成するpreseniline 1および2が報告されたことにより,AβがAD発症メカニズムの最上流にあるとするAβカスケード仮説が広く受け入れられてきた12).今までに多数のAPP遺伝子あるいはpreseniline1または2遺伝子の遺伝子改変モデルマウスが作成され,多くのモデルマウスで脳へのAβ沈着が再現されている13).1980年,1990年代にもAD脳病理変化の個体間伝播の試みは行われていたが,いずれも失敗に終わっていた14)?16).しかし,2000年にKaneらは,AD患者脳ホモジネートを3カ月齢のAPP遺伝子改変マウス(Tg 2576)の脳に注入したところ,なにも注入しなかった群や対照症例の脳ホモジネートを注入した群と比較して,5カ月後(8カ月齢)に脳実質および脳血管へのAβ沈着が有意に多いことを示し,脳Aβアミロイドーシスが生体から生体への伝播する可能性を初めて報告した17).その後,異なるADモデルマウス(APP23,APPPS1)でも同様の結果が再現された18).また,この伝播はAβを注入してからの時間と注入したAβ濃度に依存すること,免疫沈降法にて脳ホモジネートからAβを取り除くと伝播は起こらなくなることから,この伝播にはAβが不可欠であることが報告された18).また,プリオンタンパクと同様に,合成Aβを脳内に注入してもAβの脳への沈着は引き起こされないことも併せて報告された18).さらに,神経病理学的な病変分布は,宿主のADモデルマウスと注入する脳ホモジネートの種類に依存することを示しており,これはプリオン病の表現型がPrP Scの株の違いに依存していることとよく類似していた18).また,プリオン病では少量のPrP Scが付着した金属手術器具の使用による伝播が報告されていることから19),20),Aβ脳アミロイドーシスでもAβの含まれた脳ホモジネートに浸したステンレスワイヤーをAPP23マウスに挿入したところ,4カ月後にAβの沈着が認められた21).この伝播はAβが付着したステンレスワイヤーを95℃で10分間温めても抑制されなかったが,プラズマ滅菌システムを用いると完全に抑制された21).この報告では,末梢ルートからのAβ脳アミロイドーシスの伝播についても検討しているが,経口,経静脈,経眼球,経鼻腔からの投与ではいずれも脳Aβアミロイドーシスの伝播を認めなかった21).しかし,その後同じグループが腹腔内投与にてAβ脳アミロイドーシスが伝播することを報告し,Aβ脳アミロイドーシスもプリオンと同様に末梢からの投与にて伝播し得ることが示された22).この報告では,末梢から伝播したAβは,まず血管壁に沈着し,その後脳実質に拡がっていったとされている22).Current Therapy 2012 Vol.30 No.433753