カレントテラピー 30-10 サンプル

カレントテラピー 30-10 サンプル page 29/42

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白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの白血病の新規開発薬*小林幸夫a b s t r a c t急性白血病に対する治療薬剤は基本骨格でシタラビン+ダウノルビシンを使用することは,過去40年にわたって変化がない.しかしな....

白血病治療の最前線―EBMの先にあるもの白血病の新規開発薬*小林幸夫a b s t r a c t急性白血病に対する治療薬剤は基本骨格でシタラビン+ダウノルビシンを使用することは,過去40年にわたって変化がない.しかしながら,造血器腫瘍では細胞表面マーカー,染色体,遺伝子異常がはっきりとしてきたので,新たな薬剤が開発されてきている.抗体においては急性骨髄性白血病ではCD33,急性リンパ性白血病ではCD22分子を利用した毒素結合抗体が実用化されつつあり,分子標的薬剤としては,直接分裂装置の構成分子を標的とした薬剤開発が進行している.宿主の免疫細胞に細工をして腫瘍細胞を認識させて,殺細胞効果を狙う遺伝子治療もヒトで実際に有効例が得られることが報告された.日本でも従来より早い段階で臨床試験が開始されるようになってきている点は朗報である.Ⅰはじめに固形がん領域での新規薬剤の導入は著しい.一方で,過去10年に新たに加わった急性白血病の薬剤は数えるほどしかない.慢性白血病に対する薬剤は別項で触れられるため,本稿では急性白血病に対する薬剤のうち国内外で第Ⅱ相試験以上に進行している薬剤について開発状況を述べる(表1,2).Ⅱ核酸代謝拮抗剤従来の急性骨髄性白血病(acute myelogenousleukemia:AML)の根幹をなすシタラビン類似の核酸代謝剤が開発されている.Clofarabineは,再発小児急性リンパ性白血病(acute lymphocyticleukemia:ALL)に対して2004年に米国食品医薬品局(FDA)で承認を受けた.また,悪性リンパ腫で使用されているフルダラビン,クラドリビン類似の構造式を有するが,フルダラビンで生じるような神経毒性がないことが知られている.この薬剤をAMLに用いることが検討された.すなわちシタラビン(Ara-C)と組み合わせると細胞内のアラビノフラノシルシトシン三リン酸(ara -CTP)の濃度を上昇させることができるため,併用療法で単剤を凌ぐことが期待される.表3に主な結果を示したが,そもそも単剤での効果が併用療法よりも劣るのか,標準療法の7+3療法と比較できるほどの効果があるのかなど,不明な部分が多い.ごく最近になり,単剤に対して上乗せ効果を検証する第Ⅲ相試験の結果が報告された1).主要エンドポイントの全生存期間(overall survival:OS)では,単剤を凌ぐことはできなかったが,event free survivalでは明らかに延長していた.Sapacitabineは経口剤であり,後述の脱メチル化*国立がん研究センター中央病院血液腫瘍科外来医長88Current Therapy 2012 Vol.30 No.101074