カレントテラピー 30-10 サンプル

カレントテラピー 30-10 サンプル page 14/42

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概要:
白血病および関連腫瘍の病態と分類はこれらのジオキシゲナーゼによる酵素反応を阻害する.このため,IDH変異はTET2変異と同じようにDNAの脱メチル化障害をもたらすほか,ヒストン修飾も障害すると考えられる.このよ....

白血病および関連腫瘍の病態と分類はこれらのジオキシゲナーゼによる酵素反応を阻害する.このため,IDH変異はTET2変異と同じようにDNAの脱メチル化障害をもたらすほか,ヒストン修飾も障害すると考えられる.このような考察から,IDH変異により,腫瘍細胞における代謝とエピゲノム制御をつなぐ機構が破綻するのではないかと推察される.5 RNAスプライシング経路分子RNAスプライシングは,多数のタンパクがpre -mRNAと複合体を形成しつつステップを踏んで進む生化学反応である.昨年,これらのうち8つの遺伝子(U 2 A F 3 5,Z R S R 2,S R S F 2,S F 3 A 1,SF3B1,PRPF40B,U2AF65,SF1)のいずれかの変異が,多くのMDSで見いだされた8).ほとんどのケースで,これら8つの遺伝子変異は重複していない,すなわち,それぞれの遺伝子変異は相互に排他的に生じている.これらを合わせると,環状鉄芽球を伴うMDS(RARSあるいはRCMD-RS;分類の項参照)では85%と特に変異頻度が高い.環状鉄芽球を伴わないMDSでも44%でいずれかの遺伝子変異が見いだされる.またCMMLでは,55%とやはり変異頻度が高い.また,AML with myelodysplasia-related changesや治療関連AMLでは変異頻度が高い(約25%)が,de novoのAMLや骨髄増殖性腫瘍(myeloproliferativeneoplasma:MPN)では頻度が低い(10%未満).すなわち,スプライシング経路分子の変異は骨髄系腫瘍のなかでMDSあるいは類縁の腫瘍に特異的である.さらに,環状鉄芽球を伴う不応性貧血(refractoryanemia with ringed sideroblasts:RARS)などの環状鉄芽球を伴うMDSで変異が認められる遺伝子のほとんどがSF3B1である(環状鉄芽球を伴うMDSの75%でSF3B1の変異が認められる).一方,環状鉄芽球を伴わないMDSにおけるSF3B1の変異頻度は6.5%と著明に異なる.これは,遺伝子変異とMDSの分類との間にはじめて明確な関連が示されたことを意味している.RNAスプライシング経路分子変異の多くは,機能喪失型の変異と考えられており,スプライソゾームの機能低下を生じる.スプライソゾームの機能がすでに低下している細胞では,スプライソゾームの特異的阻害剤への感受性が高いことから,創薬の可能性に期待が寄せられている.ⅤMDSの分類?血球減少と形態学MDSは2008年に改訂されたWHO分類において,血球減少の種類と形態学によって1refractory cytopeniawith unilineage dysplasia(RCUD),2refractoryanemia with ringed sideroblasts(RARS),3refractorycytopenia with multilineage dysplasia(RCMD),4myelodysplastic syndrome-unclassified(MDS-U),5MDS associated with isolated del(5q),6refractoryanemia with excess blasts-1(RAEB-1),7refractoryanemia with excess blasts-2(RAEB-2),に分類されている.RCUDには,refractory anemia(RA),refractory neutropenia(RN),refractory thrombocytopenia(RT),が含まれる.上記のなかで,芽球の増加が骨髄中の有核細胞中5~9%(RAEB -1)および10~19%(RAEB -2)と規定されている高リスクMDSについては,分類が比較的明確である.一方,これ以外の分類(低リスクMDS)については,減少している血球系と異形成が認められる血球系とが一対一対応であることを前提に分類されているが,実際には必ずしもそうではないことが経験され,また指摘もされている9).すなわち,貧血以外の血球減少を認めないが多系統に異形成を認める,といったケースをRCUD(RA)とすべきかRCMDとすべきかなど,不明瞭な問題が残されている.さらにMDS -Uの診断には,形態ではなく染色体異常による分類が加味されており,複雑でわかりにくく,診断の一致率も必ずしも高くない.ⅥおわりにAMLにおいては,形態学を主体とするFAB分類Current Therapy 2012 Vol.30 No.10100317