カレントテラピー 30-10 サンプル

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ⅡMDSにおける染色体異常とMDSの診断MDSの約半数では,G-バンディングでクローン性の(つまり同じ異常細胞に由来することを示す共通の)染色体異常が認められる.これらの染色体異常は,類縁疾患であるAMLのそれとは....

ⅡMDSにおける染色体異常とMDSの診断MDSの約半数では,G-バンディングでクローン性の(つまり同じ異常細胞に由来することを示す共通の)染色体異常が認められる.これらの染色体異常は,類縁疾患であるAMLのそれとはかなり異なる.すなわち,AMLでは均衡型転座(ゲノムの量が変わらないままの相互転座)が多いのに対し,MDSにおける染色体異常の大多数は不均衡型の異常(染色体の全部または一部の欠失や増幅)である(表1).これらの染色体異常の多く(表1で*を附した3つの異常以外)は,MDSに特徴的である.そこで,WHO分類では正球性または過形成骨髄で原因不明の血球減少を認める場合,明確な「異形成」が観察されず,芽球増加がなくとも,これらの染色体異常をクローン性に検出できれば,MDS(MDS -U)と診断することを提唱している1).このことは,形態学によって命名・定義されたMDSという疾患の概念が変更される可能性を示唆している.表1で*を附した,+8,del(20q),-Yのいずれかだけを認め,かつ異形成が目立たない,という患者についても,クローン性増殖を示しており,MDSに類似の病態であることは間違いない.ただ,長期緩慢な経過をたどることがまれでないことから,形態に明らかな異形成が認められなければ,この染色体異常だけではMDSと診断しないことになっている(idiopathic cytopenia of undetermined significance:ICUS,あるいは,もし骨髄像が再生不良性貧血様であれば,再生不良性貧血と診断される).Ⅲ高解像度ゲノムコピー数解析によるMDSゲノム異常の検出Sanadaらは,ゲノム全体の25万カ所についてコピー数を調べられる高解像度アレイを用いて,MDSのゲノム異常を解析した2).その結果,約80%の症例では少なくとも全ゲノム上の1カ所に,コピー数の異常を検出できることを明らかにした.このコピー数異常を示すゲノム領域には,変異をきたして表1骨髄異形成症候群で診断時に頻度の高い染色体異常異常MDSt-MDSUnbalanced+8*10%-7 or del(7q)10%50%-5 or del(5q)10%40%del(20q)*5~8%-Y*5%-i(17q)or t(17p)3~5%-13 or del(13q)3%del(11q)3%del(12p)or t(12p)3%+del(9q)1~2%idic(X)(q13)1~2%Balancedt(11;16)(q23;p13.3)3%t(3;21)(q262;q21.2)2%t(1;3)(q36.3;q21.2)1%t(2;11)(p21;q23)1%inv(3)(q21;q26.2)1%t(6;9)(q23;q34)1%不均衡型異常が大多数であることがわかる.t -MDS:MDSからAMLに移行した症例.いる遺伝子が存在することが予想される.実際にSanadaらは,このようなゲノムコピー数異常が集積するゲノム領域で,高頻度に変異をきたす遺伝子を同定している2)〔実際には,コピー数の絶対数は2と変わらないまま,片親由来のコピーが,別な親由来のコピーに置き変わる(uniparental disomy:UPD)の集積〕.ⅣMDSにおいて異常が見いだされている遺伝子MDSにおいて異常が見いだされている遺伝子は次のように分類される(表2).1細胞増殖関連分子MDSにおいて最初に見いだされた遺伝子異常は,N -RASの点変異である3).RASは広くさまざまな細胞において細胞外からのシグナルを核に伝達し,細胞の増殖や死を制御する分子である.MDSの約10%のケースでN -RASに変異が認められ,グアノシン三リン酸(GTP)分解酵素機能が亢進している.RAS経路の下流では,頻度は低いがRAFにも変異14Current Therapy 2012 Vol.30 No.101000