カレントテラピー 30-10 サンプル

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白血病治療の最前線―EBMの先にあるものMDSの分子病態と分類*千葉滋骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は,骨髄が正?過形成で血球減少を認め,高率に白血病に移行する疾患として1982年に記載され....

白血病治療の最前線―EBMの先にあるものMDSの分子病態と分類*千葉滋骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は,骨髄が正?過形成で血球減少を認め,高率に白血病に移行する疾患として1982年に記載された.約半数でクローン性に染色体異常が認められることが明らかになり,1987年にRAS遺伝子の変異が報告されて以来腫瘍であることが明確になった.その後徐々に遺伝子異常に関する知見が集積していたが,近年のシークエンス解析技術の進歩により,ここ数年で新たに多数の遺伝子異常が明らかにされた.特に,エピゲノム制御にかかわる分子や,RNAスプライシングを実行する分子群の変異が明らかにされ,分子病態の解明が進みつつある.MDSの分類は,2008年の改訂版WHO分類でも原則は形態学に基づいている.芽球が増加するRAEB-1およびRAEB-2についてはわかりやすいが,芽球増加を伴わない群は必ずしも分類が実態に即さないことも指摘されており,近い将来には,分子病態を取り入れた分類が行われるものと推察される.Ⅰはじめに骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndromes:MDS)は,1造血幹細胞ないしこれに近い未熟細胞のゲノム異常によってクローナルに造血細胞が増殖する疾患,つまり腫瘍であって,2骨髄は通常正形成ないし過形成であるにもかかわらず,血球の減少をきたし(正常造血の抑制と無効造血),3顆粒球系,赤血球系,巨核球/血小板系のうち多系統にわたって,種々の程度の成熟障害と形態異常を呈しており(異形成),4高頻度で急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia:AML;特にAMLwith myelodysplasia -related changes)に移行する,という疾患である.MDSは,1982年にFrench -American -British(FAB)分類で提唱されて以来,病態解明が進められてきた.当初から形態学的な観察に基づく疾患概1念で,その後の改訂FAB分類やWHO分類)でも,原則的には形態学に基づいた分類が採用されている.一方で,約半数の症例でクローン性の染色体異常が認められる.さらに,近年のアレイを用いた高解像度のゲノムコピー数解析により,75~80%の症例でゲノム異常を検出できることが明らかになった.そして,大規模シークエンス解析技術が進歩し,ほとんどすべてのMDS患者でゲノム異常の検出が可能な時代に突入した.本稿では,MDSの分子病態の進歩を述べたうえで,現在の分類法を概説し,この疾患が将来どのように理解されるかについても想像してみたい.*筑波大学医学医療系血液内科教授Current Therapy 2012 Vol.30 No.1099913